「これを読まないと今年の損失」中瀬ゆかり絶賛! 永井紗耶子の時代小説「木挽町のあだ討ち」

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。1月26日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【"中瀬親方”による1月のおすすめ作品】

◆関脇
エッセイ「たりる生活」
著 群ようこ(朝日新聞出版)

本の雑誌社勤務時代に、デビュー作「午前零時の玄米パン」で話題となった、エッセイの名手、群ようこによる、共感必至の引っ越しエッセイ。

中瀬親方のコメント「先日、22年間ずっと生活を共にした猫のしいちゃんが旅立って、群さんは終活のことも考えて、今住んでいる部屋が"ひとり暮らしには広すぎる”と思ったのをきっかけに引っ越すことを決意するんです。

でも、シニアに貸してくれる部屋の少なさや長年の生活で溜めた物の処分、ライフラインの手続きも意外と大変で、群さんは今の自分に合った暮らしを整えるために、いかにして引っ越しをし、断捨離したかをすごく面白い筆致で書いています。

とても夢中になって読んで、群さんの影響で私も少し前に断捨離したんです。というのも、3年後ぐらいに今住んでいるマンションを引っ越す計画があって、そこに向けて物を捨てていこうと個人的に思っていて、2t(ぐらいの物を)捨てました。

群さんのこのエッセイを読んだら、まだ絞れるなと。物を捨てていくなかで、本当に自分にとって何が大切か、必要かということが見えてくるんです。

これから引っ越しを考えている方、これから断捨離を考えている方、特に50歳オーバーぐらいのこれから少しずつ生活をダウンサイジングしていこうと思っている人は、これを読んだら絶対にヤル気が出るし、ヒントがいっぱい書かれているので、丁寧に生きる、"たりる”とはどういうことかをすごく考えさせてくれる、めちゃくちゃ面白いエッセイでした。ぜひ、お読みください」

◆大関
映画『エンパイア・オブ・ライト』
2月23日(木・祝)全国ロードショー

舞台は1980年代初頭のイギリスの静かな海辺の町・マーゲイト。地元で愛される映画館「エンパイア劇場」で働くヒラリーは、青年スティーヴンと出会い、次第に心を通わせ始める。名匠サム・メンデス監督による珠玉のヒューマン・ラブストーリー。

中瀬親方のコメント「私が大好きな女優さん、名優のオリヴィア・コールマンがヒラリーを演じています。ヒラリーはつらい過去が原因で心に闇を抱えている女性で、そんな彼女の前に夢を諦めて映画館で働くことを決めた黒人の青年スティーヴンが現れます。

職場には嫌な館長がいるんですけど、それ以外の職場の人たちとの人間関係は好きで、仲間たちのやさしさに触れるなか、ヒラリーとスティーヴンは徐々に心を通わせていくんですけど、その後、このふたりには思わぬ試練が立ちふさがってくるんです。

この映画はそんなふたりを軸に、特にヒラリーの心の中のことがすごく大切なテーマになっているんですけれども、映画と映画館という魔法についてすごく力強く感動的に描いたヒューマン・ラブストーリーです。

特に最後の15分間は、泣き続けて恥ずかしいぐらいでした。私は試写会で観たんですけど、いつもは観終わった後に担当の方に作品の感想を伝えているのに、このときは何かを言おうと思っても涙で声が詰まって、こんなことは今までの試写会ではなかったです。

映画が人生に与えてくれたものなどを思い出したらもう感無量になっちゃって、押し寄せるようなラストが待ち受けています。ヒラリーの年齢設定は私よりもずっと若いと思うんですけど、中年女性がずいぶん年下の若い男性と付き合うことになるときに巻き起こるであろう、せつない思いが画面から押し寄せてきます。

映画が好きな方、今、人生でつらい思いをしている方が観たら、絶対に泣きます。今しゃべりながらも思い出して涙が出てきました。そういう映画です」

◆横綱
小説「木挽町のあだ討ち」
著 永井紗耶子(新潮社)

ある雪の降る夜、木挽町にある芝居小屋のすぐそばで、美しい若武者による壮絶なあだ討ちが成し遂げられる。菊之助は父親を殺めた男を斬り、その血まみれの首を高く掲げると、多くの人からその快挙が称賛された。それから2年後、菊之助の縁者だと名乗る侍が、あだ討ちの顛末を聞きに芝居小屋を訪れるのだが…。

中瀬親方のコメント「永井紗耶子さんは、昨年、小説『女人入眼』が直木賞候補になってとても話題になった作家さんです。惜しくも直木賞は逃したんですけど、各界からすごく絶賛された小説でした。

正直、私は『木挽町のあだ討ち』は、永井さんの(「女人入眼」の)さらにその上を行く最高傑作だと思っています。既に1月の段階で今年のベストワンかもしれないと思うぐらいに、めちゃめちゃ面白い小説です。

あだ討ちのあった夜に何があったのか、何を見たのか、菊之助の縁者を名乗る侍が(関係者に)インタビューのように聞いていくんです。1話1話がひとり語りのような形で物語が進んでいくんですけど、侍はあだ討ちのことだけでなく、なぜか彼らの人生や過去についても(話を)聞き始めるんです。その過去の話がべらぼうに面白いです。

(彼らの)エピソードだけでもグッ、グッと持って行かれるんですけど、あの夜にあだ討ちを見た人の目撃談があって、5人が語り終えた辺りから"えっ!?”と驚くような展開を見せていきます。実は(このあだ討ちには)隠された真相があって、すごく優れた時代ミステリーでもあるんです。

実は私、時代小説は普段あまり読まないんですけど、これは時代小説が苦手な人も絶対に面白いです! 『これを読まないと今年の損失』と言ってもいいぐらいの1冊なので、騙されたと思って、ぜひ読んでみてください。この1冊は(読んで)損をさせない、とても素晴らしい小説でした」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回2月のエンタメ番付は、2月23日(木・祝)にお届けする予定です。お楽しみに。

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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~17:59 <TOKYO MX1> 「エムキャス」でも同時配信(地上波放送エリアを除く)
メインMC:垣花正
アシスタントMC:大橋未歩(月~木)、ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/goji/
番組Twitter:@gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

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