かかりつけ医の負担減らすには 「地域包括ケアの拠点」=“おうちに帰ろう病院” 医師会病院の試み

「地域包括ケア」をご存知ですか? 高齢者が自宅などで暮らしながら必要な医療や介護を受ける仕組みです。しかし、かかりつけ医の負担が大きく、訪問診療が普及しないなどの課題もあります。

広島市の安佐地区ではこの春、県内では初めて、かかりつけ医で作る医師会が地域包括ケアの拠点病院をオープンします。課題解決への1歩となるのでしょうか?

去年、別の場所に移転した広島市立安佐市民病院の跡地です。残された北館を改修して4月、オープンするのが、安佐医師会病院です。

勉強会に参加した人
「今度、新しく開業します病院について詳しく、みなさんに講義をしていただきたいなと思います」

先月末に開かれた地元の公衆衛生推進協議会の勉強会です。説明に立った安佐市民病院の 土手慶五 病院長は、医師会病院の初代院長に就任する予定です。

安佐市民病院 土手慶五 病院長(安佐医師会病院 院長予定)
「簡単に言えば、家に帰る、“おうちに帰ろう病院” 」

土手病院長によりますと、安佐市民病院の入院患者のおよそ4割は緊急入院。その6割は75歳以上の後期高齢者です。

手術を受けて、およそ10日後には退院しますが、18%の人は体力の低下や体の障害ですぐに自宅に帰れません。その人たちを自宅に戻れるよう支援するのが、安佐医師会病院です。

土手慶五 病院長
「トイレまで歩くのが少ししんどい人は、直接には家に帰れません。(自宅に)ちょっと手すりくらい付けてほしいなあ。トイレまで歩けんから、リハビリして帰りたいなあ。北部医療センター(安佐市民病院)に入院するのは9日間しかない。安佐医師会病院には40日~50日いるんで、その間にリフォームしたり、リハビリしたり、患者に寄り添いながらやっていくところが、医師会病院の一番大きな機能なんですね」

しかし、医師会病院の役割はそれだけではありません。

柴田和広 記者
「ここが、患者さんが入院生活を送る地域包括ケア病棟です。実はここは、これから家に戻る人だけではなくて、家に戻った人が軽い症状で再度、入院が必要になったときの受け皿にもなります」

自宅に戻った患者の医療は、地域のかかりつけ医が担います。そのかかりつけ医を支援するのもこの病院の役割です。

課題が、介護度が重く、病院に行けない患者への訪問診療です。小さな診療所などでは医師への負担が大きく、安佐地区でも医療機関の4分の1ほどしか取り組めていません。

この日は、かかりつけ医への説明会がありました。

安佐市民病院 土手慶五 病院長(安佐医師会病院 院長予定)
「これからの高齢者をかかりつけ医として診て行くときに、やはり大きい問題としては、お1人でやっていたら疲弊するだろういう問題が必ず起こって来ると思うんですね」

かかりつけ医が疲弊したとき、将来、医師会病院が一時的に患者を預かる計画です。医師の中にはかかりつけ医の連携を考える人もいます。

かかりつけ医
「みんなでやっていくという形を作らないと疲弊していく可能性が高いので、早くグループ作りをしていくのが大事かなと思いますね。よその患者さんもうちが診てあげたりとか、お互いさまですよね」

病院の1階には、広島市が安佐医師会に運営を委託する「在宅医療・介護連携支援センター」が入ります。

センターは、医師会病院の開院に向け、3年前から地区内で在宅医療や介護に関わる全ての職種の人の横のつながりを作って来ました。情報交換で得られたデータはすでに患者の医療・介護に活かしています。

広島市北部在宅医療・介護連携支援センター 高橋祥一 センター長
「今まで以上に在宅医療・訪問医療が必要になってくると思いますので、それに対して、それに応えようとする多職種の方がたくさんおられることが、安佐北区の強味かなとは思います」

地域包括ケアのモデルケースとなるのでしょうか? 安佐医師会病院は、4月1日に開院します。

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