TCRヨーロッパ初挑戦のEuroRX3王者コービー・パウエル「ラリークロスが育ててくれた」

 2023年よりTCRヨーロッパ・シリーズへの初挑戦を表明した現EuroRX3チャンピオンのコービー・パウエルは、本格的なモータースポーツ・キャリアわずか2年でタイトルを獲得したFIA欧州ラリークロス選手権での2年間に敬意を表するとともに、デュアル・サーフェスで学んだドライビングの規律が「つねに僕の心の中にある」と語り、新たなサーキット・カテゴリーでの飛躍を誓った。

 2021年にフォラント・レーシングのアウディA1でデビューを飾り、初年度からランキング2位を記録する非凡な才能を見せたベルギー出身のパウエルは、続く2022年に年間5戦中4勝を挙げ、最終戦を残した状態で初タイトルを獲得してみせた。

 この実績により、同国を代表するツーリングカー部隊コムトゥユー・レーシングに抜擢され、早くもリージョン選手権の最高峰であるTCRヨーロッパに向け、急成長しているキャリアの次のステップを踏み出す態勢を整えた。

「EuroRX3での時間は非常に重要だった」と明かした現在18歳のパウエル。「僕は四輪の経験がほとんどない状態でラリークロスを始めたし、カートとクロスカーでしか競争していなかったから、最初は運転免許さえ持っていなかったんだ」

 それでも、ラリークロスに挑戦する際には「最初からトップチームでなければ」と常日頃から宣言してきたという。

「可能な限り最高のレベルでパフォーマンスしたかったから。ありがたいことに、それはまさにフォラント・レーシングで見つけたものさ。非常に競争の激しいカテゴリーだったけど、最初の(2021年)バルセロナでのラウンドですぐに、自分のスピードとレースクラフトを披露することができたんだ」

「第一印象を決めるチャンスは一度しかない。誰もが『うわ、この子は速い』と言ってくれることがとても重要だった」

「シーズンを通じて僕はルーキーだったけれど、勝利に向け戦うためにそこにいたこと、そして他の選手が僕のことを考慮に入れる必要があることを証明できたんだ。この2年間がなかったら、コムトゥユーは僕に興味を持ってくれなかったと確信しているよ……」

 そのパウエルは、ラリークロスの現場で磨いたドライビングのみならず、戦術からメンタルトレーニングまで、クルマの内外で学んだことすべてを表現することにも熱意を示す。

2021年にVolland RacingのアウディA1でデビューを飾り、昨季は年間5戦中4勝を挙げ、最終戦を残した状態で初タイトルを獲得してみせた
「この2年間がなかったら、Comtoyouは僕に興味を持ってくれなかったと確信しているよ……」とパウエル

■自身を育てたラリークロスが「つねに心の中にある」

「別の前輪駆動車でTCRに挑戦することは、このEuroRX3での2年間の経験が大きなメリットになるだろうね」と続けたパウエル。

「フォラント・レーシングのようなプロの組織では、チームと協力してデータを分析し、非常に正確にセットアップする手法と、クルマから感じたことを表現する方法を学ぶことができた。最終的に違いを生むのは細部なんだ、ってね」

「それだけでなく、スタートがうまくいかなかったり、最初のコーナーでトップに出られなかったりして、かなりプッシュしなければならないときなど、ハイテンションな状況にも慣れてきた。ラリークロスの決勝のように、違いを生み出そうとするのに1周しかない状況はTCRでも同じだと思う」

「速いのに結果が思いどおりに行かないとき、物事を受け入れる方法も学べた。 昨年は何度もペースがあったのに渋滞などで遅れてしまい、最初は非常に難しいと感じたが、落ち着かせてくれる素晴らしいチームが僕の周りにいて、それは前進する上で非常に有益だったよ」

 改めてTCRという新たなキャリアパスに乗り出すパウエルだが、ラリークロスの存在は「脈々と受け継がれてきた分野」だと語り、将来的な可能性の扉が閉ざされているわけではないことも明言する。

「まず、今季の僕は2年前のようにふたたびルーキーに戻るから、浮き沈みは避けられないだろう。両方を平等に管理し、悪い結果の後にふたたび完全に集中するため、すぐに頭をすっきりさせる必要がある。サーキットレースへの挑戦を本当に楽しみにしているけど、ラリークロスはつねに僕の心の中にある。ここが育ててくれたし、父と祖父もラリークロスに出場していたからね。さまざまな状況への対処方法について、より多くのことを教えてくれた場所が、ここなんだ!」

Comtoyou Racingも、TCRヨーロッパに加え『TCR World Tour』参加に意欲を示す
「サーキットレースへの挑戦を本当に楽しみにしているけど、ラリークロスはつねに僕の心の中にある」とパウエル

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