平和への“返歌”ウクライナに届け 居留地キッズコーラス「私のキーウ」披露

「私のキーウ」を合唱する長崎居留地キッズコーラスの児童ら=市立大浦小体育館

 ロシアのウクライナ侵攻開始から1年に合わせ、長崎市の「長崎居留地キッズコーラス」は23日、ウクライナ語で愛唱歌「私のキーウ」を歌った。かつて首都キーウの子どもたちが被爆者のために「長崎の鐘」を合唱したことへのお返しに同国と中継する予定だったが、現地の情勢悪化を受け断念。オンライン配信に切り替え、平和への祈りを世界に発信した。
 キーウを拠点とする少女らの「ナイチンゲール合唱団」は2018年、被爆者の故・井原東洋一さん=享年(83)=が同国を訪問した際、日本語で「長崎の鐘」を披露。侵攻後はメンバーが各地へ避難し、活動が難しい状況になっている。
 昨年8月、長崎市立大浦小などの児童16人でつくる「長崎居留地キッズコーラス」のメンバーが、ウクライナ正教会のポール・コロルーク司祭=東京都=と市内の路面電車で偶然出会ったことを機に、ウクライナのために何かしたいと考え始めた。その中で同合唱団の存在を知り、今度は長崎からウクライナの歌を届けることになった。
 「私のキーウ」はキーウの景観の美しさや古里への愛を歌い上げる。ウクライナ語の習得には苦戦したものの、長崎大に避難しているウクライナ人留学生が発音を指導。今年1月に再び来崎したコロルーク司祭に練習中の歌を披露した映像は、ウクライナのニュース番組でも取り上げられ話題を呼んだ。
 23日は会場の大浦小とウクライナを中継し、同合唱団の指導者に歌声を聴いてもらうはずだったが、戦時下の現地は電気やインターネットが度々切断。空襲警報が鳴り、爆音が響いてはシェルターへの避難を余儀なくされる状態になっており、配信に変更した。
 迎えた本番。子どもたちが伸びやかな歌声を披露すると、会場に招かれた長崎大の避難学生らは時折目元をぬぐった。ウクライナ語を教えたイヴァン・ディロフさん(21)=南部イズマイル出身=は「私なら知らない言葉で歌うのは難しいが、子どもたちはできた。感謝したい」と喜び、歌声を通じて世界に平和が広がることを望んだ。
 大浦小6年の山田真唯子さん(12)は「一日でも早く戦争が終わることを願って歌った。(避難学生が)喜んでくれてこちらもうれしくなった」と笑顔。戦争や災害で困っている国の手助けをしたいという目標を語った。コーラス隊を指導する山口昌子教諭は「感無量だった。いつかは(ナイチンゲール合唱団と)子どもたち同士が直接交流できる日が来れば」と未来を見据えた。


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