ジャック・ビルヌーブ、WEC初参戦は「絶好の機会」日本での元僚友クリステンセンとの再戦を熱望

 フェラーリ、ポルシェ、キャデラックが新しいマニュファクチャラーとして参戦する2023年のWEC世界耐久選手権。これらの自動車メーカーとともに同年よりハイパーカークラスに進出するバイコレス改め、ヴァンウォール・レーシングのドライバーとなったジャック・ビルヌーブが、選手権デビューを前にその心境をWEC公式サイト(https://www.fiawec.com/)のインタビューに向けて語った。

 元F1ワールドチャンピオンでインディ500王者でもあるビルヌーブは今年、コリン・コレス率いるフロイド・ヴァンウォール・レーシングチームの一員として、トム・ブロンクビスト、エステバン・グエリエリとチームを組み、WECのトップカテゴリーで新開発のハイパーカー『ヴァンウォール・バンダーーベル680』をドライブする予定だ。

 WECハイパーカークラスのキャンペーンに参加するに至った経緯について、51歳のカナダ人はプロフェッショナルレースへの復帰を模索するなか、友人を通じてスイスのチームとコンタクトを取ったことを説明した。

「僕たちはF1に乗っていた頃に何度か話をしていて、その後は共通の友人を通して何度かチャットをした」とビルヌーブ。

「僕のゴールはフルタイムでプロフェッショナルレースへ戻ることであり、過去15年間やってきたような、NASCARでの数レースや、あちこちのレースに出ることではなかった。また、僕の中にはつねに重要な目標である“トリプルクラウン”の達成があった」

「友人はヴァンウォールがチームを作っているようだ、と言った。それを聞いた翌日、僕はバルセロナに飛んでマシンをテストした。だから、本当にタイミングの問題だったんだ」

「また、今がWECに関わるのに絶好の時期だと思っている。チャンピオンシップはどんどん大きくなっているし、新しいコンストラクターも入ってきて世界選手権としての地位が本当に高まっている。これからのシーズンが楽しみだよ」

 プジョーから2年連続で出場した2008年のル・マン24時間レースで、総合2位表彰台を獲得した経験を持つビルヌーブ。初のシーズンフル参戦となるWECでチャレンジになるものが何であるか問われると、彼はチームメイトと1台のクルマをシェアしてレースを戦わなければならないことを挙げた。

「最大の課題は、他のドライバーと一緒に仕事をしてクルマをシェアすることだ。僕はいつもクルマのセットアップや運転方法について、非常に細かいこだわりを持っている」

「僕にとってはこの微調整が重要なのだが、ふたりのドライバーとマシンをシェアする場合はそれができない」

「すべてのドライバーが各々のドライビングスタイルを持っているので、ある部分で妥協しなければならないし、グループとして(方向性を)決めなければならない」

「セットアップをどれだけ妥協して、自分のパフォーマンスを損なわず、同時に他のドライバーのためにもなるようにできるか。それはとても難しいことで、僕がこれまでやってきたコンマ1、2秒を争うようなやり方とは正反対だ」

2023年、WECハイパーカークラスに参戦する4号車ヴァンウォール・バンダーベル680

■かつてのチームメイト、ル・マン9冠王者と戦えないのは「残念」

 チームメイトとなるディルマンとグエリエリの印象については、「エステバン(グエリエリ)とはテストで会っただけだ」とビルヌーブは述べた。

「一方、トム(・ディルマン)とは彼がF2に参戦していたときに面識があり、少し知っている。彼のことはいつも高く評価していたから、彼が同じクルマに乗ってくれるのはとてもうれしいよ」

 バルセロナでドライブしたハイパーカー『ヴァンウォール・バンダーベル680』の第一印象を尋ねられたビルヌーブは楽しかったと語るも、まだやるべきことが多くあると続けた。

「ドライビングは楽しかった。重いクルマだがスピードはある」

「運転するのは簡単ではなかったけど、クルマはまだ初期段階だった。だから、バランスを取るべきことがたくさんある」

「(今の段階で)6時間や8時間のレースを戦うのは難しいかもしれないが、基本的な部分はできている。最終的には運転しやすいクルマ、そして耐久レースでは壊れないクルマであることが重要だ」

 ビルヌーブは、対戦を楽しみにしている人はいるかとの問いかけに、かつて日本でトムスのチームメイトとして全日本F3選手権を戦ったライバルの存在を挙げた。

「トム・クリステンセンがレースに参加していないのが残念だね」

「彼は倒すべき相手だったし、僕が日本でレースをしていた時にチームメイトだった。今でも仲良くしているんだ。彼とレースができたら、きっと素晴らしいものになっただろう」

「それ以外にも、このシリーズにはチャンピオンが何人かいて、新参者ばかりでないのがいいところだ。尊敬し、打ち負かすべきドライバーがたくさんいることは、つねに信頼性と価値を高めてくれる」

「僕らの目標は競争力をつけることと、チームとクルマがどのような状態にあるのかを確認することだ」

 3月の開幕戦セブリングに始まり11月のバーレーンで閉幕する今季のWEC。全7戦が行われるシーズンの中でもっとも楽しみにしているのはどのラウンドか、との質問には、「言うべきものがこれ以外にあるものか!」と即答のビルヌーブ。

「もちろん、ル・マン24時間レースだ」

「だが、WECのいいところは他のレースもどんどん大きくなってきていることだ。ル・マン以外のレースが価値を持つようになったことは、とても重要なことだと思う」

「ル・マンを除けばポルティマオだろうか……。僕は行ったことがないのだけど、コースは楽しそうだし、ビーチも近いし、絶対に悪いことではないと思うよ!」

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