コロナ禍の卒業生 教諭からの贈る言葉④

この3年間、生徒たちは新型コロナウイルス感染症の影響でたくさんの我慢を強いられ、これまでの「当たり前」がことごとく覆された。教諭たちも共に悩み、迷い、それでも精いっぱいに青春を送る教え子の笑顔に励まされてきた毎日を過ごした。長崎新聞は長崎県教委、長崎県学事振興課を通じ、県内の公私立の高校(定時制・通信制含む)、特別支援学校高等部の全108校に対し、教諭から生徒たちへ贈る言葉を募り、95通のメッセージが寄せられた。(掲載は順不同)

■昼休みが最高の思い出

「マスクで口元が見えないから話し掛けにくい。友達ができるか不安」と言っていた入学式。先日、3年間で一番の思い出を聞かれ、「この学校に来て友達ができた。笑って話をした昼休みが最高の思い出」と答えたね。何よりうれしい言葉だった。3年生にして初めて開催できた体育祭、行先を変えた修学旅行、皆、開催できたことに喜びを感じた。我慢や不自由なことが多かったからこそ、当たり前のことや日常に喜びを見いだせるようになった。これからも笑顔と感謝を忘れず、日々を大切に。困ったときはいつでも相談においで、私たちはこれからもあなた方の応援団。
(佐世保特別支援学校・尼崎直美教諭)

■困難をものともしない強さ

理不尽も 度重なれば 日常か? 憧れたバラ色の青春。でも現実は、君たちには何の非もないのに我慢を強いられる日々。その理不尽さにやり場のない怒りを感じたことでしょう。よく耐え忍びましたね。この3年間を乗り越えた君たちは、少々の困難はものともしない強さを身に付けたはずです。この世は理不尽なことだらけ。でも、負けるな「コロナ禍の高校3年生」!それぞれの夢に向かって突き進んでください。君たちの前途に幸多からんことを!
(島原農業・白鶴忠司教諭)

■最高に楽しそうな表情

「分校」になって2回目の卒業式。5人の生徒が北松分校から旅立ちます。様々な制約が多い3年間でしたが、生徒たちは自分らしく、明るく楽しく元気よく、過ごしてきました。一番の思い出となった修学旅行では、念願の「東京」に行くことができました。「秋葉原」や「東京ディズニーランド」など、初めて訪れる場所で、最高に楽しそうな表情をしていました。これからも、自分らしく、生活をエンジョイしながら送っていってほしいと思います。
(佐世保特別支援学校北松分校高等部・末永珠理教諭)

■泣いたり、笑ったり、怒ったり

体育祭や学院祭、オープンスクール、聖和音楽のつどいなど、たくさんの行事を工夫し「楽しむ」を探しながら作り上げようしてきました。泣いたり笑ったり怒ったり悩んだり…いろんな感情をお互いぶつけ合いながら、一緒に答えを見つけてきましたね。今あるもの、事に感謝し、自分を大切しながら、自分から幸せをつかんでいってください。みなさんと共に過ごした3年間、最高だった!ありがとう♡
(聖和女子学院・田中恵理教諭)

■愛深き者となることを祈る

欠如は痛みと悲しみの源だ。しかしまた欠如こそが痛みと悲しみとをくみ取らせるのだ。深さのない器をもって、君は何をくみ取ろうとするのか。空洞のない楽器によって、君はいかなる音を響かせようとするのか。与えられた欠如こそを生かさねばならない。青春は欠如の連続にほかならない。それゆえに求め続けるのだ。それゆえに悲しむ者に寄り添い得るのだ。欠如こそ愛をくみ取る美しき器。君が愛深き者となることを心から祈る。
(長崎南山・西経一校長)

■先生の顔半分しか知らないまま卒業

「何で私たちばっかり、と悔しかった」(卒業生代表挨拶)。振り返れば「マスク」「密ですよ」「黙食」が繰り返しかけた言葉。「先生の顔の半分しか知らないまま卒業します」(生徒からの手紙)。思い描いていた高校生活ではなかったかもしれませんが、当たり前の日常に感謝すること、できることへ全力で取り組んだ力を糧に、手桶(たおけ)に結んだ空色のリボンに込めた「空のような広い心を持ち、自分のためだけではなく隣人のために生きる人になってほしい」と願っています。
(活水・五貫俊子教諭)

■笑顔にいつも元気もらった

3年前、新型コロナウイルス感染症が感染の広がりを見せ、入学後間もなく学校閉鎖を余儀なくされました。再開後の1年生次の体育祭は中止となりました。その後も感染対策は続き、3年次の修学旅行は当初の予定を大幅に変更し、日帰りの修学旅行に変更となりました。活動制限の多い、3年間でしたが、そのような中でも、皆さんは一つ一つの行事を悔いなく、精いっぱい取り組み、笑顔あふれる姿を見せてくれました。そんな姿に私たち職員はいつも元気をもらいました。本当にありがとう。
(虹の原特別支援学校・堀江勇治教諭)

■希代の強さを備えて

「こういう状況だから」という一言でいや応なく理解を求められ続け、それに応え続けてきた皆さん。言いたいこともやまやまあれど、ぐっと堪えて、本分を全うしてきたのを知っています。かわさない、逃げない、投げ出さない、これがこの3年で皆さんに染みついた精神。諸君はコロナに翻弄(ほんろう)された気の毒な子たちではありません。強い。それも希代の強さを備えています。さあ、そろそろ出番です。思い切りどうぞ。そばにいられてよかったです。
(青雲・松尾篤史教諭)

■表情を超えた優しい心

コロナ禍の学校生活を3年生と共に過ごして、多くの生徒がマスクの下の素顔を見せることをためらっていたことに気付きました。そんな中、私は皆さんの「表情を超えた優しい心」に出会いました。自宅療養期間から教室に戻った友人に寄り添うクラスメートの表情は、マスクに隠れていましたが、心は優しさで溢れていたのです。表情ではなく行動で思いを伝えられる皆さんはとても優しい心を持っています。その心にこそ自信を持ってこれからの人生を歩んでください。
(鎮西学院・中島理絵教諭)

■いつか戻る「普通」のために

思い返せば、2020年4月、入学して2週間後、全国の学校が約20日間の休校に。部活動も思うようにはできず、その年の高校総体もインターハイも総文祭もすべて中止となり、先輩たちの悔しい思いを目の当たりにした君たちでした。だからこそ、思いをつなぎ、挑んだ残りの2年。さまざまな制約がある中、いつか戻るであろう「普通」の高校生活のために、新たな様式を生み出し、そこに工夫を加え、学校行事も部活動も取り組んできましたね。ある意味、コロナ禍だったからこそ得られた知恵や教訓。すべてが皆さんの人生の糧となることを信じています。卒業おめでとう。
(波佐見高職員一同)

■他者を大切にする人であり続けて

向陽高校3年生のみなさん。本校の建学の精神「奉仕」のもとに、特色ある七学科でそれぞれの夢実現に向け努力してこられました。コロナ禍での高校生活でしたが、一人ひとりの力を発揮した体育祭や文化祭での活躍ぶりは、私たち教職員にとっても大切な思い出です。これからは、自らが選択した道を、一人の大人として歩むことになりますが、これまで支えてきてくれた方々、そしてこれから出会う多くの方々に「感謝」の気持ちを忘れずにいてください。そして、他者を大切にすることができる人であり続けてください。
(向陽・飯田千加子助教諭)

■苦難乗り越えた経験を踏み台に

「明日から○日まで自宅にて家庭学習になります」。3年前、マスク越しにようやく顔を覚え始め、これからだという頃、とても残念な気持ちで一杯になったことを今でもよく覚えています。さまざまな制約がなされた学校生活でしたが、君たちは部活動や専門の発表、資格取得などこれまでの先輩に劣らない立派な実績を残してくれました。この3年間の苦難を乗り越えてきた経験を踏み台にして、明るい未来を切り開いてください。
(諫早農業・深松博文教諭)

■結果よりも過程が大事!

期待に胸を膨らませ入学、直後の休校で出ばなをくじかれ、やりたいことができない悔しい日々。修学旅行、雪とミッキーと戯れることができず、サファリパークで動物と戯れた。3学年全員でハンドボール決勝戦応援。躍動する仲間の勇姿を目に見焼き付けた高校総体。高校3年間の思い出は残ったかな?最後にお願いがある!僕らより長生きしてくれればいいよ!結果よりも過程が大事!きちんと、ちゃんとできる大人になってくれればそれでいい!
(佐世保商業・3学年担任一同)

■世を照らすような存在に

皆さんの高校生活はコロナ禍の3年間で不自由なこともたくさんありました。しかし、制限がある中で可能性を模索しながら生み出されたものこそ、他にも勝る輝きを放つものだと思います。芸術作品でも、苦しみもだえながら描かれた作品は「本物」が生まれやすいものです。これから世を照らす光のような存在として、それぞれの舞台で輝いてください。皆さんの活躍が楽しみです!
(純心女子・平山理教諭)

■友達思いの優しい人に成長

皆さんの高等部生活は、まさに新型コロナウイルス感染症予防の真っ只中でした。いろんなことを我慢しなくてはなりませんでしたが、その分、互いを思いやる、友達思いの優しい人に成長してくれたように思います。4月からはそれぞれ、別々の進路に進みます。まずは目の前のお仕事を一生懸命がんばりましょう。皆さんのこの先の人生が幸多きことを先生たちは祈っています。がんばれ~‼
(鶴南特別支援学校・大串尚央教諭)

■「コロナだから」で幾度も我慢させ

4月20日、初の担任としてやっとみんなに会えた日。緊張しながらの呼び名にみんなが元気よく返事してくれたこと、今でも覚えている。待ち望んだ学校生活、「コロナだから」という言葉で幾度も我慢をさせてしまった。その中で「自分たちに何ができるか」を本気で考え、行動するみんながかっこよかった。3月1日、最高の卒業式だった!怒涛の3年間をみんなと過ごせてよかった!希望に満ちあふれたみんななら、最高の未来を切り開いていけるはず!頑張れ!
(壱岐商業・徳永宏輔教諭)

■「かわいそう」は似合わない

新型コロナウイルス感染症と共に生きたこの3年間、失ったものはたくさんあります。しかし、いろいろなことに挑戦し、「新しい伝統」を作った3年間でもありました。リモート授業や3月に実施した修学旅行、そして文化部・体育部ともに部活動でこれまで以上の活躍をして創立120周年を盛り上げてくれました。前向きに生きるあなたたちの姿に周囲が元気づけられました。みなさんに「かわいそう」なんて言葉は似合いません。これからもみなさんが未来を明るく照らす光であれ!
(口加・黒田晃子教諭)

■休み時間はこっそり密に

君たちは授業がしばしばオンラインになり、給食は黙食だった。修学旅行は日帰りで、学園祭も午前中だけ。ただでさえ少人数なのに「密」であることを止めなければならなかった。でも君たちはバラバラで自由気ままなようでも、休み時間はこっそり密だったし、後輩には頼りになる先輩だった。人の優しさや愛情を感じ、優しさで返せる、そんなしっかりまとまった一つのクラスだった。君たちの前途に幸多きことを、心から祈っています。
(聖母の騎士・千住由貴子教諭)

■自分自身の道を歩む

コミュニケーションや大勢の人たちの中に入ることなど苦手なこともありましたが、学校をほとんど休むことなく、就職に向けて、実習への挑戦や運転免許取得に日々努力しましたね。しっかりと自分の考えをもっているので、自分自身の道を歩むことは大丈夫だと安心しています。これからも自分の体を鍛え、心を磨き、ご両親やご家族、これから出会う人たちを大切にしながら、健康・事故に気を付けて頑張ってください。
(鶴南特別支援学校高等部西彼杵分教室・岩永広喜教諭)

■触れ合う多くの機会を失い

コロナ禍で多くの活動に制限がかかり、皆さんは友達と自由に触れ合う多くの機会を失いました。特に、楽しみにしていた修学旅行は県外での初めての経験を期待していただけに、とても残念な思いをしましたね。しかし、この3年間で経験したさまざまなことが、皆さんを成長させる糧となり、それぞれ、心も体も大きく成長し、できることがたくさん増えました。これから皆さんの新しい生活が始まりますが、これまでの学習の成果を発揮しながら、明るく、強く、そして豊かな生活を送ってください。いつまでも応援しています。
(長崎特別支援学校・卒業生担任一同)


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