角川春樹氏が認めた才能…横溝正史の表紙画を手掛けた杉本一文さんの世界 「犬神家の一族」ポスターや原画など出身地の福井県で展示

杉本一文さんが描いた横溝作品の(左から)「獄門島」「悪魔が来りて笛を吹く」「犬神家の一族」の映画版ポスター=福井県の越前市武生公会堂記念館
杉本一文さんが表紙画を描いた横溝作品の文庫本

 「八つ墓村」「犬神家の一族」などで知られる作家横溝正史の小説の表紙画を一手に手掛けた、福井県越前市出身のイラストレーター杉本一文さん(75)=東京=の展覧会「美しさと 恐ろしさと 杉本一文の世界」が、同市武生公会堂記念館で開かれている。原画や文庫本など約250点が展示され、横溝作品を印象付けるおどろおどろしくも妖艶な世界観が堪能できる。

 杉本さんは書家の故杉本長雲さんの三男。東京のデザイン事務所勤務時に23歳で自費出版した画集が、角川書店の編集局長だった角川春樹氏の目に留まり、翌年に「八つ墓村」の表紙画担当に起用された。以降、100冊近くの表紙画を手掛け、横溝作品の人気を支えた。

 「獄門島」「悪魔が来りて笛を吹く」「犬神家の一族」の映画版ポスターをはじめ、数々の名作の表紙画原画を展示。1970年代の横溝ブームに火を付けることにもなったイラストは、どこか戦慄を感じさせるような美しさが表現されている。杉本さんの表紙画を集めるコレクターは全国に多く、会場には市内のファンが所蔵する文庫本約120冊を一堂に並べた。

⇒【写真】杉本一文さんが表紙画を描いた横溝作品の文庫本

 50歳の節目に制作を始めた銅版画が併せて展示され、国内外で高い評価を得ている緻密で耽美な作風が楽しめる。現在も製作依頼が絶えないという本の見返し部分に張り付ける「蔵書票」の銅版画作品も披露されている。

 3月26日まで。入館料は一般200円、障害者とその介助者1人は無料。月曜休館。

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