“初の日本一” けん引 剣道・長崎祥太郎(島原高→鹿屋体大) <心新たに 2023年春・5>

「剣の技術だけでなく、人間性も磨いていきたい」と意気込む長崎=島原市、島原高剣道場

 振り返れば、うまくいかないことが多かった3年間だった。だからこそ、勝つためにチームで本気になれた。主将として、大将として挑んだ四国インターハイ。オール3年生で組んだ団体で県勢初の日本一をつかんだ。
 2年生の春から主力となり、183センチの長身から繰り出す強烈な面を武器に先鋒を任された。だが、6月の県高総体準決勝の西陵戦。「力のある先輩が後ろにいるから“勝てればいいな”という試合をしてしまった」。1本を取れずに引き分けると、チームは代表戦の末に敗れてしまった。
 主将と大将を任された自分たちの代でも挫折を味わった。日本一を目標に入学してくるチームメートは精鋭ぞろい。激しい部内戦でなかなか勝てない日々が続いた。大将を降ろされ、中堅で出場した1月の全国選抜大会県予選は、決勝で長崎南山に惜敗。代表戦までもつれたが、任せてもらえなかった。
 そんな数々の悔しさが、心を、体を突き動かした。
 迎えた最終学年。ぶれずに懸命に竹刀を振り続けた。選手同士のミーティングもたくさん重ねた。「個人的に強くなろうという選手ばかりで、あまり本音を話せていなかった。でも、勝つにはそういうことじゃないと気づいた」。結束を強めた結果、最後の県高総体決勝で長崎南山にリベンジ。一人一人が気迫を前面に出して、最後は“定位置”の大将戦でしっかりと勝負を決めた。

得意の面を生かしてインターハイ初優勝に貢献した長崎(左)=高知市、春野総合運動公園体育館

 その翌月、忘れられない出来事があった。全九州大会で個人を制覇した後、1通の手紙と餞別(せんべつ)が届いた。孫が剣道をしているという女性からの喜びと激励のメッセージ。「優勝の記事を拝見して手が痛くなるほど拍手をしました」と書いてあった。「今でもずっと心に残っている。これをいただけたからインターハイで力を出し切れた」
 その餞別は今も部の宝物。福田監督からも「強い学校はひがまれたりするけれど、おまえたちの頑張りが誰かの力になっている。こうやって応援してくれる人がいるからこそ、頑張らないといけない」と言われた。インターハイを勝ちきるための原動力となった。
 3月に全国選抜大会を控える後輩たちにも、周囲の支えや感謝の気持ちを忘れずに戦ってほしいと願う。卒業後は福田監督の母校でもある鹿屋体大へ。島原で培った経験を糧に、新たなステージでもまた、日本一を目指していく。

 【略歴】ながさき・しょうたろう 広島市出身。3人きょうだいの末っ子で、幼稚園の年長から竹刀を握った。小学6年で山口に移り、野田学園中3年時に全国中学大会男子個人で16強入り。島原高に入学後、主将を務めた3年時の四国インターハイ男子団体で県勢初優勝に貢献した。心がけているのは「人がやらないことを率先してやること」。好きな食べ物は焼き肉。183センチ、80キロ。


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