ウクライナ1年

 先日、長崎市であったウクライナ支援のコンサートに出かけた。会場は満席。「歌には力がある。勇気と希望を届けたい。世界平和を祈って歌います」。オペラ歌手のオクサーナ・ステパニュックさんはそう語りかけると、初めに祖国の国歌を熱唱した▲東京を拠点とするステパニュックさんはキーウ州出身。軍事侵攻が始まった頃は国歌ばかり歌っていたそうだ。舞台はもちろん、愛する故郷を日々憂い、昼夜を問わず口ずさんでいたのだろうか▲「われらはわれらの地を治めよう」「自由のために身も心もささげよう」。古くから大国の力に翻弄(ほんろう)されてきたウクライナ。その歌詞は勇ましく、主権と領土、自由を守るための決意に満ちている▲最前列に招かれていたウクライナからの避難学生11人が終盤に登壇し、「スラーヴァ ウクライーニ!」と力強く声を上げた。ウクライナに栄光を-。不当な戦火にさらされる国民の心の叫びだ▲ロシアの攻撃が始まってきょうで1年。ウクライナ国民の祖国への思いや団結は一層強まり、エスカレートする軍事支援に怖さも感じる▲舞台では学生が「私たちは一人ではないと実感した」と感謝を述べた。停戦条件は互いにみじんも重ならず、出口は今も闇の中。自分に何ができるのか。難しい問いだが、おのおのの立場で考えたい。(真)

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