佐世保のこども園で不適切保育か 園児への暴力否定も退園相次ぐ 保護者、改善訴え

 長崎県佐世保市南部の認定こども園で不適切な保育が行われているとして、複数の保護者が、園に対応改善を求めるよう市に訴えていたことが27日までに分かった。同園は本紙の取材に園児への暴力は否定した。市は強い口調で園児に関わらないよう園を指導。園の対応に納得できないなどとして、少なくとも昨年夏から来月までに5人の園児が退園する。

大人には子どもの人権に十分配慮した対応が求められる(写真はイメージ)

 複数の関係者によると、保育士が▽げんこつやそろばんで頭をたたく▽ボールペンで胸を突く▽「ばか」と言う▽劇の練習でゆっくり大きな声で台詞が言えないといつまでも遊べない-などと園児らが訴えているが、同園はすべて否定。市も「確認できなかった」としているが、「保育士が感情のあまり大きな声を出したのかもしれない」と園側の回答を受け、改善を求めたという。
 ただ園児たちの面前で担任をベテラン保育士が何度も叱責(しっせき)し、子どもたちが怖い思いをする場面もあった。昨年秋に保護者の指摘を受けた園は「園だより」で「お詫(わ)び」をした。
 また複数の関係者によると、昨年夏の熱中症警戒アラート発令時には脱水症状を示した園児が複数いた。
 昨年6月下旬、園から汗びっしょりで帰宅した園児がぐったりするなどして発熱。夜間に救急外来を受診した。保護者は「命にかかわる」と危ぐし、間もなく退園させた。
 本紙が入手した文書などによると、園がこのころエアコンのドライ(除湿)と扇風機で対応しているとして、保護者が冷房を付けるよう要求。市にもエアコン関連の苦情が複数寄せられたという。だが園は本紙の取材に「感染対策で換気をしていた。(状況に応じて)冷房と除湿を使い分けていた」と主張している。
 昨年9月中旬には、髪や下着がぐっしょりぬれた別の園児が帰宅後、意識がもうろうとするなどしたという。お茶で遊ぶとの理由で空になった水筒にお茶を補充してもらえなかったと園児は訴えたが、園側は「廊下にお茶は置いており、子どもたちに声を掛けながら水分を補給させている」と否定。ただ園は当時、保護者に「配慮不足」と謝罪している。
 また給食後に苦手なものを口にためて涙ぐんでいる園児が嗚咽(おえつ)して吐くと、ベテラン保育士が「出したらだめって言ったやろ。(吐いたものを)お茶で飲み込みなさい」などと怒ったとの証言もあるが、園側は否定した。
 本紙は園関連の音声を複数入手した。その一部には昨年5月の年長と年中のマーチングの練習の様子が収められていた。練習に集中できないため、若手保育士によって練習を外されていた園児が壁をいじっていると、ベテラン保育士が若手保育士に「この子が壁の木をはいで壊している」と伝えた。「えー、マーチングもしないでですか?」と応じる若手保育士に、ベテラン保育士は「直させてください。できないならお母さんに直してもらいましょう」と指示した。園側はこうしたやりとりは「ない」と否定した。
 市は一連の保護者からの改善要求について園に報告するよう指導。園は職員の意識改革や園児の人権擁護のセルフチェックなどに取り組む方針を示した。市は今後も園の対応の確認を続けるとしている。


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