「生徒の笑顔に励まされ」長崎県教諭から贈る言葉 コロナ禍の高校3年間卒業

後輩たちへ贈る消毒液置きを手にする鶴南特別支援学校時津分校の高等部3年生。担任の教諭たちに肩を抱かれ笑顔を見せる=時津町、同校

 2月28日、長崎県立鶴南特別支援学校時津分校(西彼時津町)。卒業式を前に、体育館では高等部3年生9人の送別会が開かれていた。後輩たちは心のこもった踊りを披露。3年生はお返しに手作りの消毒液置きを贈った。
 この3年間、生徒たちは新型コロナウイルスの影響で多くの我慢を強いられ、これまでの「当たり前」がことごとく覆された。帰りのホームルーム。担任の濱西大介教諭(46)は「伝えておきたい」と生徒を前にし、こう言った。「『一日二笑』。これから先、嫌なことも悲しいこともたくさんあるけど、1日に2回は笑ってほしい。楽しむ心を忘れないで」

 県内の多くの高校で3月1日、卒業式が行われる。コロナ禍で共に悩み、迷い、それでも精いっぱいに青春を送る教え子の笑顔に励まされてきた教諭たちにとっても、感慨深い1日となる。
 長崎新聞は県教委、県学事振興課を通じ、県内の公私立の高校(定時制・通信制含む)、特別支援学校高等部の全108校に対し、教諭から生徒たちへ贈る言葉を募り、95通のメッセージが寄せられた。
 「変化の時を共に乗り越えた皆さんとは教師と生徒というより、戦友のような関係になれたのではないか」。長崎女子高(長崎市)の松田香月教諭(43)はそんな言葉を選んだ。心の疲れがたまっていく中、励まし笑い合うことで生まれた、楽しい思い出の数々。「奇跡のような確率で皆さんと特別な時間を過ごすことができた3年間に感謝します」
 県立五島高(五島市)の園田賢一教諭(29)は、不安や困難に打ちのめされても前進をやめなかった生徒たちを誇りに思う。「ここまで突破してきた君たちなら、これからの人生も力強く切り開いていくと確信している。『蒼(あお)き故郷』で過ごした時間を心の支えに、ギバレ!」
 精道三川台高(長崎市)の栁原悟教諭(50)は、修学旅行で鳥取砂丘に行った時の光景が忘れられない。澄み切った空の下、生徒たちはマスクを外し、歓声を上げながら走り出した。「制服が砂まみれになるのも構わず。みんな暴れたくてしょうがなかったんだ、と分かった瞬間だった」。エネルギーを存分には発揮できない生活に耐えた3年間。「だからこそ、これからとんでもない飛躍を見せてくれると信じている」
 コロナ禍はハンディのある生徒たちにも容赦はしなかった。県立ろう学校(大村市)に通う生徒たちにとって、マスク越しでは相手の口の動きが分からず、意図が読み取れない。そんな状況でも、手話を使える者同士、アクリル板越しに会話を楽しんだ。窯業を指導する野沢邦彦・主任実習助手(60)は「逆境をプラスに前向きに生きていくことを学んだ皆さん。世の中はそんなに悪いことばかりではないよ」。そっと背中を押した。
 五輪出場の経験のある、県立西陵高(諫早市)のカヌー部顧問、西夏樹教諭(50)は競技になぞらえ、生徒たちの未来へエールを送った。「新入部員はカヌーに乗ってすぐに転覆し、また乗っては転覆してを繰り返し、上達していく。それはオリンピック選手も同じ。うまくいかなくて当たり前。失敗の数だけ力になる。失敗を恐れず、諦めずに挑戦し続けてください」

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