トラック運転手の労働環境の改善を図るため、2024年4月から運転手の時間外労働が年間で最大960時間に制限される。電子商取引(EC)の拡大などで荷物の輸送量が増える中、残業規制の強化による影響として生じるとされる、運転手不足や輸送量低下などの「2024年問題」。来春に迫る制度適用に向け、栃木県内の物流業界も対応に追われている。
19年の働き方改革関連法の施行で、トラック運転手らの時間外労働時間に上限が設けられた。違反事業者には罰則もある。
同法の他に、現行は最大3516時間となっている運転手の年間拘束時間を原則、3300時間以下に抑えなければならない。
野村総合研究所によると、2024年問題で対策を講じなければ、25年に県内の荷物量の28%、30年には同36%が運べなくなると試算されている。
■柔軟な働き方提案
「物流が止まることが1番大変なこと」
川崎運輸(真岡市台町、川崎常吉(かわさきつねきち)社長)の真崎美代(まさきみよ)専務は危機感をあらわにする。同社の運転手は約20人で、医薬品、建材メーカーの貨物を取り扱うほか、全国に郵便物を配送している。来春から残業規制が強化されると、運転手は3人不足し、現状の約2割の貨物が運べなくなる可能性があるという。
真崎専務は「荷主との関係性を維持するため、仕事は断りたくない」。そこで配車の見直しに加え、柔軟な働き方を広く提案し「家事や育児をしている女性の採用も強化したい」と対応を急ぐ。
国土交通省によると、トラック運転手の労働時間は21年時点で、全産業の平均より約2割長い。有効求人倍率は22年8月時点で2倍を超え、人手確保が大きな課題となっている。
■付加価値の共有
住宅資材を中心に運送するウナン(宇都宮市屋板町、半田臣一(はんだしんいち)社長)は、同法施行を受け、先行して運転手の残業時間を月45時間(年間540時間)以内に抑えるための社内改革を進めてきた。残業時間を超えないよう複数の協力会社にも配送を依頼し、受託する荷物量を維持している。
ただ、運転手には残業時間が減っても従来とほぼ同水準の給与を保証。一時、営業赤字となったという。対応として荷主に対し、資材運搬だけでなく、住宅の組み立てなども一貫して対応可能な自社の強みを丁寧に説明し、運賃引き上げについて理解を得たという。
半田社長は「交渉はこれまでの信頼関係がベースになる」とした上で「付加価値をどう説明できるかが重要になる」と話した。