「こんなふうになれるかな」。入学後、上級生の練習や言動を見てそう感じたことを覚えている。一つ二つしか年の変わらない心技体が「とにかくすごかった」。それから月日を重ねて昨年、大村工の上野結来は主将兼捕手として、春夏日本一を達成したチームの中心にいた。「こんなふうに」と自らが思われる立場に成長できた。
印象深い試合は昨夏のインターハイ準決勝、相手は何度も対戦してきた鹿児島工。「互いに手の内を知り尽くしていて、負けるならここ」と感じていたライバルに初回、特大の先頭打者本塁打を浴びた。ロースコアを想定した中で早々と2失点したが、自身を含めて打線が爆発。逆転コールドで勢いづくと、ダブルヘッダーの決勝は新見（岡山）を4-0で下した。
その前の春の全国高校選抜大会も優勝していたが、当時は未熟な部分も多く、続く県春季選手権と全九州春季大会では敗戦。「たまたまの日本一だった」と鍛え直して再挑戦した夏だった。勝因は「一人一人の長所を最大限に発揮できたから。一つ武器があるだけでチームの幅が広がった」。攻撃では長打に頼らず、たたきつける打球やバント、走力など小技も際立った。本当に強かった。
主将就任時は不安も大きかったが、仲間に支えられた。「何かあれば学年全体で叱られ、みんなで反省した。本当にこのメンバーで良かった」。だから、一番好きだったのは「練習後の時間。特に土日は少しゆっくり着替えながら、しゃべって息抜きして…」。コロナ禍の規制も多かったせいか、そうした何げない場面も青春の一ページとして深く刻まれている。
「たくさんの方々に支えられてきたんだなと実感する3年間だった」。下宿生活でありがたみが身に染みた両親、グラウンド内外で協力してくれた卒業生、自らの時間を犠牲にして熱心に教えてくれた指導者…。感謝を胸に学びやを巣立つ。
卒業後は複数の選択肢から同大進学を決めた。大きな目標が二つある。一つはバッテリーを組んだ同級生のエース遠藤隆大や複数のOBが在籍する強豪・岐阜聖徳学園大に勝つこと。もう一つは体育教諭として長崎に戻ること。「得意な子にも苦手な子にも、スポーツって面白いよ、すごいよって伝えたい」。それが恩返しになるかなと考えている。
【略歴】うえの・ゆうき 長崎市出身。稲佐小3年でソフトボールを始めて淵中時代は軟式野球部に所属。野球を含めて複数の高校から誘いがあった中、日本一の環境でやりたいと名門の大村工を選択した。強打の捕手、主将として昨年の全国高校選抜大会とインターハイで春夏連覇を達成。3冠を目指した秋の国体は準決勝でタイブレークの末に敗れた。好きな食べ物はオムライス、言葉は「初志貫徹」。171センチ、68キロ。
