現地実習で学び深める 「対馬グローカル大学」3年目 有害鳥獣問題や産品作りに取り組む

山林を歩き、有害鳥獣問題や対馬固有の生物などについても学んだ現地実習=昨年9月1日、対馬市内

 グローバル(国際的)な視点で、ローカル(地域)課題を解決できる人を育成する長崎県対馬市の3年目のオンライン学習講座「対馬グローカル大学」が5日で終了する。島外の大学教授らが講義やゼミ活動などを展開。大学生や社会人、高齢者らがインターネット上や現地実習で学びを深めた。
 同講座は、国連の持続可能な開発目標(SDGs)を推進する市の取り組みの一環。高等教育機関のない対馬でもSDGsの一つ、「質の高い教育をみんなに」を実現しようと、2020年度に始まった。市民や、対馬にゆかりのある人が無料で受講でき、1年単位で修了する。
 当初は公民館などで講座を開く計画だったが、新型コロナウイルス流行でオンラインを中心とする形式で始まった。講師は島内外の専門家や大学教授、市職員など立場はさまざま。web講義、オンラインゼミ、仮想研究室の三つの講座があり、web講義ではこれまでに離島経済論や離島振興論、考古学など約90科目を動画で配信。仮想研究室は、ネットのチャット(会話)機能で、受講生や講師同士で意見交換する。
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 本年度は、昨年6月に始まり、今年3月まで。受講生150人(2月1日時点)のうち、人気を集めているオンラインゼミは80人が登録。全8種類で環境や社会、ビジネス、教育、食、ものづくりをテーマにするほか、大学生や高校生限定のゼミもある。月1回オンラインで開き、現地実習にも取り組んでいる。
 大学生ゼミは空き家の利活用がテーマ。昨年8月下旬から9月上旬にかけての現地実習では空き家だけでなく、磯焼けや有害鳥獣問題の現場も歩いた。福岡女子大3年の岡本遥香さん(21)は「将来は漠然と国際協力関係で働きたかったが、現場で学ぶことで対馬に愛着がわき、地域密着の働き方も考えるようになった」と話す。

オンラインで開かれた「社会ゼミ」の様子(対馬市SDGs推進室提供)

 ほかのゼミもバラエティー豊か。「食ゼミ」では対馬の資源を生かした新たな産品作りを、「ビジネスゼミ」では社会課題の解決に役立つビジネスプラン構築を目指すなど、学びにとどまらず、「実践」に移すことも目指す。
 講座事務局の崔春海さん(27)=市SDGs推進室=は「異なるゼミ間の交流を増やし、切磋琢磨(せっさたくま)する場をつくりたい」と今後を展望する。漂着ごみ問題などへの注目で、対馬に興味を持つ人が増えてきていることなどを踏まえ「対馬で一歩踏み込んだ学びや、地域課題の解決に参加する人が今後も増えればうれしい」としている。

◎受講生、5日に成果発表

 対馬市は5日午前10時から正午まで、厳原町の対馬博物館で対馬グローカル大学の修了発表会を開く。各オンラインゼミの受講生が学習成果を発表する。
 午後1時からは「対馬学フォーラム」を開き、市内小中高の児童生徒や島外の大学院生が対馬にまつわる総合学習や研究活動の成果を報告する。

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