諫干、開門認めず 漁業者「全てでたらめ」・営農者安堵も「もめたくない」

諫早湾干拓事業を巡る主な訴訟

 国営諫早湾干拓事業を巡り、最高裁は漁業者側の上告を退ける決定をし、開門を認めなかった昨年3月の福岡高裁判決が確定した。漁業者からは「全てでたらめ」「司法にも裏切られた」と憤り、営農者からは安堵(あんど)の気持ちだけでなく、「漁業者ともめたくない」と複雑な声も漏れた。
 2日午後、報道機関からの電話で決定を知ったという島原市の開門確定判決原告、松本正明さん(71)は「少しだけ期待はしていたが『駄々をこねれば判決を守らなくていい』というあしき前例をつくっただけ」と静かに怒りをにじませた。有明海の現状を「後継者が残っていけない状況だ」と憂い、それでも「私たちが諦めたら終わり」と自らを鼓舞。司法判断が「非開門」で統一される中、“宝の海”の再生に向け「今後もできる限りのことを頑張っていく」と述べた。
 ノリの養殖を47年続ける同市の篠塚光信さん(64)は「(決定は)あっけないね」とあきれ声。有明海のノリの不作範囲が年々広がっているといい、「国は現実を直視せず、ごまかしてばかり。このままでは地域全体が駄目になっていくが、国にとっては痛くもかゆくもないのだろう」と批判した。
 一方、中央干拓地の約45ヘクタールで営農する松山ファーム(雲仙市)の松山哲治さん(48)は「これで安心して営農を続けられる」と決定を歓迎。「元々訴訟になると分かっていれば入植しなかったし、漁業者とももめたくない。国が漁業者と話し合い、折り合いを付けてもらいたい」とおもんぱかる。
 同干拓地での営農を長男に引き継いでいる同市の池田進さん(74)は「干拓事業でほ場整備され、効率的に農業ができるようになっている。(今回の決定で)現役世代が不安なく農業に取り組み、ますます盛んにしてほしい」と期待を口にした。
 決定について、大石賢吾知事は、国や関係者に対し「司法判断に沿って、開門によらない真の有明海再生を目指していただきたい」、諫早市の大久保潔重市長は「国や県と連携し、干拓事業で創出された干陸地などの利活用や諫早湾の水産振興にこれまで以上に力を注いでいく」とそれぞれコメントを発表した。

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