『政治姿勢』配慮と信念、終盤「かたくなさ」 <検証・佐世保市政 朝長市長4期16年①>

今期限りで退任する佐世保市の朝長市長。周囲からは手堅く市政を運営したと評価される(写真はコラージュ)

 佐世保市長、朝長則男(74)の政治姿勢にはいくつかの共通点がある。
 例えば市民が集まる地域行事。あいさつに立つ際は真っ先に出席議員の名前を紹介する。市議選が近づくと、自らを支持する立候補予定者の事務所にさりげなく立ち寄り激励。ある重鎮市議は朝長を「配慮の政治家」と言い表す。
 地域住民への気遣いも徹底している。2007年市長選で「市民第一主義」を掲げて初当選。翌08年に全27地区を訪問する「市政懇談会」を始め、各地区の代表と2年に1回の頻度で直接対話する。その数は現在184回に上る。
 休日には小さなイベントにも足を運ぶ。一部議員らは「選挙運動を兼ねている」と冷ややかだが、昨年11月に市長退任を表明した前後もペースは変わらなかった。
 1987年から市議を2期、94年から県議を4期務めた。選挙は全戦全勝。いずれもトップ当選した。政治活動の基盤には「国会議員以上」と評される強固な後援会組織がある。事務所には多い時で秘書ら7人が在籍。市内全域に支部を置き、資金力は県内屈指とされる。
 政策の根幹には何があるのか。市長就任までは、市内で基幹病院を運営する社会医療法人財団の専務理事などを歴任。政界進出前には佐世保青年会議所理事長を経験し、商店街の経営者らと同じ目線で地域活性化を考えてきた。旧知の経済人は「現場の経営感覚を大切にする」と言う。
 朝長は市長就任直後、職員に「3つのC」を求めた。それは「チャレンジ」「チェンジ」「コミュニケーション」の頭文字。挑戦と変革を重視する姿勢は強いリーダーを連想させるが、「職員の意見にじっくり耳を傾け、慎重に判断を下すタイプ」。周囲にはそんな印象を与える。
 ただ、1期目から約12年にわたり副市長として仕えた川田洋(72)の見方はやや異なる。「市長の頭の中には最初から結論がある。それでも相手を否定せず、時間をかけて協議し、最後は自分が信じる方向へ持っていく」。周囲への「配慮」と、自らの「信念」で手堅く市政を推進した。
 ただ、任期が長くなるにつれ“変化”も見え始めた。3期目が後半に入った2017年。朝長は行政運営の大方針である総合計画とは別に、観光や都市整備、基地問題などの重要政策をまとめた「リーディングプロジェクト」を突如打ち出した。独自色を強めようとする中、4期目は「事業の進め方にかたくなさがある」という声も周囲から漏れた。
 それは「最重要課題」と位置付ける石木ダム建設事業でも表れた。
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 佐世保市長の朝長則男は、4月の市長選に出馬せず、今期限りで退任する。経済政策で存在感を示した一方、人口減少や石木ダム、基地問題などの懸案は残る。周囲の声を拾いながら、朝長市政4期16年の成果と課題を考える。=文中敬称略=

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