“開門認めず” 諫干・法廷闘争が事実上決着 請求異議訴訟 最高裁、漁業者の上告棄却

潮受け堤防の北部排水門。中央の調整池の奥は中央干拓地(小型無人機ドローン「空彩4号」で撮影)

 国営諫早湾干拓事業潮受け堤防の開門を命じた確定判決の「無効化」を国が求めた請求異議訴訟で、最高裁第3小法廷(長嶺安政裁判長)は、漁業者側の上告を退ける決定をした。1日付。開門強制は漁業者の「権利乱用」とした差し戻し控訴審判決を支持した形。「開門」と「非開門」でねじれていた司法判断は「非開門」で統一され、法廷闘争は事実上決着した。漁業者らが求める開門の実現は極めて厳しくなった。
 最高裁は2019年、別の諫干訴訟2件で「非開門」を確定させている。「開門」としては唯一残っていた10年の福岡高裁確定判決を巡る請求異議訴訟で、最高裁の判断が注目されていた。
 小法廷は詳しい決定理由は示さなかった。裁判官5人全員一致の決定。
 10年の確定判決は堤防閉め切りと一部海域の漁業被害との因果関係を認め、5年間の開門調査を命じた。だが国は、口頭弁論終結後の「事情変動」を理由に14年、執行力排除を求める請求異議訴訟を佐賀地裁に提起。「13年以降、諫早湾近傍部で漁獲量は増加傾向に転じている」などと主張し、漁業者側に開門を強制しないよう求めた。国は一審で敗訴したが、二審福岡高裁では逆転勝訴。しかし、最高裁は二審判決が共同漁業権の解釈を誤ったとして、審理を差し戻した。
 22年3月の差し戻し控訴審判決は「漁獲量」について、確定判決が示した「魚類」ではなく、国の主張を認める形でシバエビなどを含む「魚種」で判断。「共同漁業権の対象となる主な魚種全体の漁獲量は増加傾向にある」と認定した。その上で、魚類の「漁獲量の有意な減少の全て、またはその大半の原因が、閉め切りによるものと言えるかは疑義がある」と指摘。開門による営農・防災への支障も増大しているなどとし、開門強制は「権利乱用に当たり、信義則に照らし許されない」と結論付けていた。


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