「おじさん」切り口に日本画紹介 県立博物館、来月2日まで

日本画に描かれたさまざまな「おじさん」を紹介した企画展

 日本絵画をユニークな切り口で紹介する企画展「絵の中に集まる愛すべきおじさんたち」が4月2日まで、県立博物館で開催されている。田崎草雲(たざきそううん)や高久靄厓(たかくあいがい)らの作品に描かれた「おじさん」に焦点を当て、その意味や鑑賞ポイントなどを分かりやすく解説。「『このおじさんたちは何をしているんだろう』という素朴な疑問が日本絵画に親しむきっかけになれば」と担当した久野華歩(ひさのかほ)さんは狙いを話す。

 同館が所蔵する江戸時代以前を中心とした日本美術は200点超。今展は人文系テーマ展として、「古美術を家族連れ向けに展示したい」(久野さん)と16件を選んだ。「集まるおじさん」に着目することから、そこに表された物語や文化的な背景をひもとく。

 第1章「訪ねるおじさんたち」は師や友との交流編。「達磨(だるま)慧可対面図(えかたいめんず)」(伝狩野(かのう)元信(もとのぶ))は、雪に埋もれながらも憧れの師に出会えた慧可の感極まった表情、「三酸図」(梅渓賢直(ばいけいけんちょく))では指先につけた桃花酸をなめた蘇東坡(そとうば)らのそろった「すっぱ顔」が面白い。友に会うため、夜中に一人舟をこいで門前まで来たものの、「興が尽きた」と会わずに帰る草雲の「雪霽行舟図(せっせいぎょうしゅうず)」は変化球か。

 滝の音にも負けない笑い声が聞こえてきそうな「虎渓三笑山水図(こけいさんしょうさんすいず)」(啓孫(けいそん))に描かれている“おじさん”の正体は、慧遠法師(えおんほうし)、陶淵明(とうえんめい)、陸修静(りくしゅうせい)。「3人はそれぞれ仏教、儒教、道教の人。三つの教えは思想を超えて一致するというエピソードでもある」(久野さん)として、3人を狂言回し的に会場のあちこちに配した。

 第2章「おじさんたちの風雅なる集い」は、酒を愛し、詩や琴(きん)に興じるおじさん多数。川に酒杯を浮かべ、杯一杯を飲み、詩を一編作るという風流な遊宴で、趣向を忘れお茶を飲む靄厓の「蘭亭曲水図(らんていきょくすいず)」、文人たちが憧れた架空の集まりを描いた高隆古(こうりゅうこ)の「西園雅集図」などが並んでいる。

 いずれも中国人物故事を画題とし、「時代や場所を超え、連綿と紡がれてきたおじさんたちの理想と憧れの結晶」と久野さん。「難しく構えず入門編として楽しんでほしい」と来場を呼びかける。「おじさんたちとの思い出の一枚」も撮れるよう会場での撮影も可。

 19日午後1時半から学芸員とっておき講座「日本絵画のテーマ」、26日午後2時から展示解説。(問)同館028.634.1311。 

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