投資信託や銘柄にも直結する【インフレ】を見極めるための5つの指標

今回は、投資信託や銘柄にも直結する、注目すべきインフレ関連の経済指標について紹介します。インフレ関連の経済指標をおさえることで、3つのメリットが考えられます。


インフレ関連の経済指標をおさえる3つのメリット

1つ目は、物価上昇率の予測が可能となることです。インフレ関連の経済指標を把握することで、物価上昇率の予測が可能となります。これにより、企業や個人が将来的な物価上昇に対応するための対策を講じることができます。

2つ目は、投資判断の基礎が確立できることです。インフレ関連の経済指標は、企業の業績や国家経済の状況に影響を与えます。このため、インフレ関連の経済指標を把握することで、投資判断の基礎が確立できます。

例えば、インフレ率が上昇している場合には、物価が上昇するため、企業の原材料費や人件費が増加することが予想されます。企業の利益に影響を与える可能性があるため、投資判断に反映する必要があります。

3つ目は、金融政策の方針を理解できることです。インフレ関連の経済指標は、中央銀行が取る金融政策の方針を理解するためにも重要です。中央銀行は、インフレ率をコントロールすることで、物価の安定と経済の安定を図るための金融政策を行います。そのため、インフレ関連の経済指標を把握することで、中央銀行がどのような金融政策をとる可能性があるかを予測することができます。

特にいま、米市場ではFRBの利上げが長期化するとの観測が再燃しています。その一因としては、予想以上に賃金や物価が予想を超えて上昇している、つまりインフレが継続していることを示す経済指標が相次いでいるためです。

アメリカの中央銀行であるFRBは「物価安定」と「雇用最大化」という使命を持っているので、インフレの際は「物価安定」のために金融引き締めをする必要があります。インフレが想定よりも長期化するリスクをFRBは懸念していますが、金融引き締めをすると景気後退懸念につながるため、株価は下落傾向になるとされており、実際足元では下落傾向にあるといえるでしょう。

米市場の動きは、日本の株価にも影響を与えます。FRBの動向は、私たちの保有する株式や為替にも影響を与えると言えますので、インフレ関連の経済指標を知っておく必要があると考えます。

インフレ関連の5つの経済指標

インフレ関連の経済指標を把握することは、物価上昇率の予測や投資判断、金融政策の理解に役立ちます。そのため、経済に関心がある方は、インフレ関連の経済指標を押さえておくことが重要です。

それでは、どの経済指標をおさえておけばいいのか、5つ紹介しましょう。

(1)米国雇用統計

米国の雇用情勢を表す最も注目度の高い経済指標で、株価や為替が大きく動く傾向にあります。アメリカの労働省が毎月発表する、米国の雇用情勢を調べた景気関連の経済指標のことで、失業率、非農業部門就業者数、建設業就業者数、製造業就業者数、小売業就業者数、金融機関就業者数、週労働時間、平均時給などの10数項目の数字が発表されます。

そのなかで非農業部門雇用者数と失業率をまずチェックしてください。

非農業部門雇用者数は、非農業部門に属する事業所の給与支払い帳簿を基に集計されたものです。全米の約1/3を網羅し、非農業部門の就業者数は、景気動向を敏感に反映するといわれています。

失業率は失業者を労働力人口(失業者と就業者の合計)で割ったもので、約6万の世帯が調査対象となっています。失業率が低下すると、企業が人材を求めるための賃金を上げる必要があるため、物価が上昇する可能性があるわけです。5%でほぼ完全雇用と言われているので、最近はそれを上回る良い水準が継続していることになります。

加えて、インフレに関連する平均賃金も押さえておきましょう。

原則毎月第1金曜日に発表される米雇用統計は、日本の時間に直すと、夏時間では日本時間午後9時半、冬時間では日本時間午後10時半に発表されることになります。3月は冬時間です。今回は変則的に第2金曜となっており、3月10日(金)の午後10時半に発表予定です。

なお、2月に発表された1月の米雇用統計は失業率が予想3.6%に対して結果が3.4%と53年ぶりのよい水準となりました。非農業部門雇用者数も予想19.0万人増に対して、結果は51.7万人増と予想を大きく上振れています。失業率もよかったですが、雇用者数が市場予想を大幅に上回りインパクト大でした。

(2)消費者物価指数(CPI)

消費者物価の変動を示す経済指標の1つで、米労働省が毎月中旬に発表しており、全国の都市部における家計の消費支出を調査して算出されます。Consumer Price Indexの略です。衣料や食料品など約200項目の品目の価格の変化を調査して指数化することで、米国国内の物価の上昇・下降などの変動を表す指標となっています。

買い手側である消費者が購入した、モノやサービスなどの物価の動きがわかるため、米国国民の生活水準を把握できる経済指標といえます。ちなみに米国では消費者物価指数の中から変動の激しいエネルギー関連数値や食料品目を取り除いたものを「コア指数」といいます。

インフレ率を分析するための最重要指標としてマーケットでも注目されていますが、実際の景気よりも数ヵ月~半年遅れた遅行指数であることは把握しておきましょう。なお日本のCPIは総務省が毎月、総務省のウェブサイトで発表しており、年金などの社会保障給付を調整する際、このCPIが目安として使われています。

前回2月発表の米1月消費者物価指数(CPI)は、前月比0.5%上昇と市場予想を上ぶれ。食品とエネルギーを除くコア指数も0.4%上昇と、市場予想を上回ったことでインフレ懸念から株は売りが優勢となりましたが、前年同月比では7ヵ月連続で伸びは鈍化しています。

次回、2月の米CPIは3月14日(火)午後9時半発表予定です。

(3)生産者物価指数(PPI)

生産者物価が出荷した完成品や原材料などの価格の変動、移り変わりを調べた指数のことで、Producer Price Indexの略です。原材料や労働力などのコストが変わると変動します。物価の変動を生産者側から測っていて、輸送コストや流通マージンなどは含まれていません。

業種や商品、製造段階などで分類されていますが、そのなかでも注目されているのが、時期的な影響を受けて価格変動が激しいエネルギーや食料品のデータを抜いた、コア指数です。市場ではコア指数の値動きの方が重視される傾向にあります。PPIが上昇するということは、最終製品の価格、消費者が購入する物価も上がるということ。つまりインフレに傾いているということになります。

2月発表の1月のPPIは、前月比0.7%上昇。前月は0.2%マイナスでしたので、前月を上回ったほか、市場予想も上振れる強い結果となりました。

次回、2月のPPIは3月15日(水)午後9時半発表予定です。

(4) 米個人消費支出(PCE)

GDPの約70%を占める米国の主要な経済指標であり、消費者が買い物をする際に支出する金額を示しています。インフレと非常に密接で米金融当局がインフレ指標として重視する指標で、Personal Consumption Expendituresの頭文字をとったものです。

個人消費支出の増加は、一般的に経済成長につながります。しかし、消費支出が過剰に増加し、供給が需要を追い越すと、需要と供給のバランスが崩れ、物価が上昇する可能性があります。したがって、個人消費支出は、インフレーションが進行しているかどうかを判断するための重要な指標の1つなのです。CPIよりも広い範囲をカバーしており、PCE指数が上昇するということは物価の上昇が進行している可能性を示します。

2月発表の1月の個人消費支出(PCE)は前月比1.8%増加と市場予想を上振れています。2022年12月の個人消費支出は前月比0.2%減でしたので、インフレ鈍化していたなかで、インフレが根強いことを示す結果となったといえます。

次回、2月のPCEは3月30日(木)午後9時半発表予定です。

(5)GDPデフレーター

国内総生産(GDP)の物価水準を示す指標となっており、国民経済全体の物価水準の変動を示します。つまり、ある期間のGDPの現在価値を計算するために、その期間の物価水準の影響を取り除いたものです。物価変動の影響を受けない財やサービスの数量である実質GDPを把握することができるわけです。

GDPデフレーターは、国内の生産物の価格変動を反映するため、インフレーションやデフレーションの度合いを示す重要な指標として利用されています。「GDPデフレーター = (名目GDP ÷ 実質GDP) × 100」で計算されます。ここで名目GDPは、当該期間のGDPの価格水準をそのまま反映した値であり、実質GDPは、その期間の物価水準を基準年度の価格水準に調整した値を示します。

米国のGDPデフレーター成長率は四半期で更新されます。2022年12月は6.4%、前回9月の7.1%から下落している状況です。


これら5つの経済指標は、インフレーションが進行しているかどうかを判断するための重要な指標です。また、それらを分析することで、FRBは物価の上昇の原因を理解し、必要に応じて政策的な対応を行っています。

ほかにも国内総生産(GDP)、ISM製造業景気指数 、FOMCというアメリカの金融政策を決定する機関の委員会終了後に公表される声明や議事録、FF金利、原油価格なども加味して、FRBがどのような政策をとってくるのかを考えることが投資家としては大切だと考えます。

皆様の投資の参考になれば幸いです。

2月27日週「相場の値動き」おさらい

3月3日(金)の日経平均株価は、前日比428円60銭高の2万7,927円47銭と上昇。前週末2月24日(金)の日経平均は2万7,453円48銭でしたので、週間では473円99銭高となりました。

米市場では、FRBの利上げ長期化観測から米長期金利が4%を超える水準まで上昇。3月1日(水)発表の2月米ISM製造業景況感指数は、予想が47.7と、前月の47.4から上昇し、米景気が堅調な結果となりました。独CPIも8.7%と予想を上振れました。

米市場は上値が重たい雰囲気ですが、英国の主要株価指数であるFTSE100は好調、日本でもTOPIXは足元好調といえそうです。

TradingViewより

TradingViewより

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