“このまま消える?春の風物詩” 長崎大などの合格発表掲示 コロナで取りやめ、オンライン定着

大学構内に張り出された合格者の受験番号=2019年3月、長崎大文教キャンパス

 長崎大など国公立大の合格発表日、緊張した表情の受験生が待ち受ける中で、大学構内に合格者の番号が張り出される-。そんな風景は2020年以降、「新型コロナウイルス感染予防のため」という理由で見られなくなった。発表のオンライン化も既に定着。受験生が念願の合格を喜び合う春の風物詩は、このまま消えてしまうのか。
 新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けは、今年5月に「5類」に引き下げられ、季節性インフルエンザと同等の扱いとなる。マスク着用は個人の判断に委ねられるなど、社会の動きは「ポストコロナ」へと進んでいる。
 そんな中、3月8日に一般選抜前期日程の合格発表を行う長崎大は、今年も学内掲示を行わない。「3密回避という文部科学省の入学者選抜試験ガイドラインはまだ生きている」と同大入試課。ホームページに受験番号を掲載するだけだ。
 6日に同日程の合格を発表する県立大もホームページだけ。同大シーボルト校の担当者は「合格発表はスマートフォンで確認できる時代。県外受験者も多い。コロナ前も大学まで掲示を見に来る人は20人未満だった。今後は掲示をしないスタイルに移行していくのでは」と話す。
 県内6私大の多くは、新型コロナが流行する前から学内掲示による合格発表をしていなかった。「ホームページで発表しているから」(長崎国際大)、「見に来る人が少ないから」(長崎総合科学大)というのが理由だ。また、県教委は今春の公立高入試から校内掲示を取りやめた。
 受験生を送り出す側はどうか。重村恭彦県立長崎西高教頭は「10年以上前から、合否はオンラインで確認するのが主流。わざわざ大学まで発表を見に行くのは、大学の近くに住んでいて合格の自信がある生徒ぐらいだったのでは。掲示があってもなくても受験生にはあまり関係ない」と話す。
 無事合格した遠方の学生は、大学周辺で住まいを探す。ただ、長崎大そばの不動産業者によると、現在同大の新入生が入居物件を決めるのは2次試験の受験時で、不合格の場合は電話などで取り消す流れだという。
 ある業者は「合格発表の掲示が行われていた頃は、受験生が喜びを分かち合ったり門の前で記念写真を撮ったりすることで、浮き立つような活気が街に生まれていた。ここ数年は不合格の連絡を受けて事務的にキャンセルするだけ。春らしい風情がなくなって寂しい」と漏らした。


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