【ドラビズチャンネル】厚労省「医薬品販売制度検討会」を薬局薬剤師の機能から考える

【2023.03.06配信】およそ10年ぶりとなる医薬品販売制度の検討は、薬局薬剤師の機能にどのような影響を及ぼすのか。この観点でディスカッションするため、Youtubeのドラビズチャンネルでは、イイジマ薬局(長野県上田市)の飯島裕也氏を招いて動画配信した。飯島氏は零売だけに注目することには違和感を示した上で、現状の問題点として、一般薬と調剤薬の提供の場が切り離されている現状を指摘した。

一般薬と調剤薬の提供の場が切り離されている問題点を指摘

第1回目の検討会で零売が取り上げられたことで、ドラビズ編集部には「零売は薬局薬剤師の本来的な機能であるのに規制する検討会の方向性はおかしい」という意見が寄せられている。おおむねSNS上でも同様の指摘が相次いでいる。

こうした現状下、飯島氏は零売だけに注目することには違和感を示した上で、現状の問題点として、「一般薬の販売場所はドラッグストア」「調剤薬の提供は薬局」と、患者からみて、切り離されていることを指摘。患者からみれば、体に入れば医薬品に区分けはないものであり、本来は薬局薬剤師が双方について、患者からの情報収集などに基づき、臨床推論し、判断する機能が重要だと語った。地域の医療機関との連携によって、受診勧奨につなげる機能も重要だとした。そうした健康相談機能を、全ての薬局でできていないとは言いきれないものの、ドラッグストアの一般薬販売では薬局薬剤師が機能している事例は少なく、薬局では調剤だけに偏重しているのが現実ではないかとした。

その上で、日薬が提唱する医療用一般用共用医薬品というカテゴリーの創設には期待感も示した。薬局薬剤師が選べる一般薬の選択肢が増えることにつながるのであれば「大賛成だ」と指摘した。

カテゴリーの創設だけで薬局は変われるのか

一方で、「カテゴリーの創設」だけでは薬局薬剤師の機能が変わるとは言い切れないとの危惧も示した。「これまで健康相談業務を行ってこなかった薬局が、カテゴリーができただけでできるのか。また、薬局薬剤師による健康相談業務によって健康につながったという、地域住民の成功体験がない中で長く時間が経った。これを取り戻すのは簡単なことではない」と語った。新たなカテゴリーの医薬品だけではなく、衛生材料や検査薬を含めて「まずは売れなくても扱う」という薬局の覚悟も必要になるだろうと指摘した。

ただ、「できているところが少ないということは本気でやればチャンス」とも指摘。「当薬局の隣にはドラッグストアがあり商品も多く、価格も安い。それでも当薬局を地域住民が選ぶ理由は薬剤師の質。そこにいち早く気が付き、行動する薬局は生き残れるのではないか」と期待を込めた。ドラッグストアに関しても「経営効率ではなく薬剤師による相談業務にシフトすべき」と提案する。「健康管理のファーストアクセス」としての機能を果たせている場が少ないことが、これまでスイッチOTCが進まなかった一因でもあるのではないかとし、今後に期待をにじませた。

編集部コメント

「零売は薬局薬剤師に認められた正当な業務である」との意見に異論をはさむ余地はない。しかし、一方で、飯島氏が指摘したように、現在の医薬品全体の提供のあり方に問題点がないかといえば、そうではないだろう。そうであるならば、本来的に持っている薬局薬剤師の機能を、地域住民のために最大限活かすためにはどのような制度が必要か、薬剤師全体の議論として醸成していく必要もあるのではないだろうか。今回の医薬品販売制度に関する検討会が、少なからずその場となっていくことを期待したい。

動画全体は以下のリンクから視聴できる。

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