佐世保学園

 県内で唯一の少年院「佐世保学園」は佐世保湾内の静かな海に面した場所にある。1949年に開庁し、長年、少年たちの更生施設としての役割を担ってきたが、4月1日に74年の歴史に幕を下ろす▲2月末まで学園内で開かれていた写真パネル展を見に行き、園内を案内してもらった。比較的非行の程度が軽い少年を収容してきたため、周囲に塀や柵はなく、開放的だ▲パネル展では、園内での様子や意見発表会など行事の写真があり、地域の人たちが多数登場する。少年院は閉ざされた空間だとばかり思っていたので意外だった。職員の人たちは「地域の協力は欠かせなかった」と口をそろえる▲餅つき大会では、地元の人たちがもち米などを提供し、当日は佐世保更生保護女性会の会員が手伝った。音楽やヨガなどもあり、さまざまな人たちが少年たち、そして学園を支えた▲立地を生かした週1回のカッター(短艇)訓練のときには、近くを通る商船が訓練に支障が出ないよう、いつもとは航路を変えて遠回りしてくれていたという。地域の人たちの温かいまなざしを感じるエピソードだ▲閉庁の理由の一つは収容する少年が減少したこと。昨年8月に最後の少年が学園を後にした。多くの人に見守られ、少年たちを受け入れ送り出してきた学園は静かに役割を終える。(豊)


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