「自然の力、伝えたい」 大学生写真家・吉永光さん=佐世保市= 絶好の場所探し山々へ

大学に通いながら、県内外の自然を撮影している吉永さん。「自然の力を感じて『元気を出して』と伝えたい」=佐世保市川下町

 最高の1枚を写真に収めるため、県内外の山々へバイクを走らせる。撮影までの待ち時間には、大学の課題をすることもしばしば。県立大佐世保校2年の吉永光さん(20)は“大学生写真家”。「自然を身近に感じてもらいたい」と、木々や川など自然からメッセージを連想し、伝えたい思いを込めて写真を撮影。インターネットで販売している。「自然の力を感じて『元気を出して』と伝えたい」と話す。
 佐世保市出身。野球を極めようと、高校は福岡県の強豪校に進んだ。卒業後、地元に戻って同大経済学科に進学。入学直後から「野球とは違うものをがんばりたい」と考えていた。「楽しそうに遊ぶ友達の一瞬を切り抜きたいな」と思い立ち、気付いたらカメラを買いに走っていた。
 近くの店を訪れ、一眼レフカメラを手に取った。9万円ほどしたが、高校時代のアルバイト代をつぎ込んだ。学内の写真サークルに入部し、先輩に教えてもらったり、動画投稿サイト「ユーチューブ」を見たりして、腕を磨いた。

木々に囲まれながら、夕日が映る海岸線を見つめる人の後ろ姿を収めた「ちっぽけな僕」。「自然の雄大さと比べたら日々の悩みはちっぽけ」と前向きな思いを込めた=佐世保市(吉永さん提供)

 「もっといろいろな場所で撮影してみたい」。大学2年を終えて休学し、大分や熊本など遠方へも遠征するようになった。
 撮影対象は、高校時代から大好きな「自然」がメイン。インターネットで航空写真の地図を見て「いい感じ」と思う場所を見つけ、バイクや車で向かう。途中からは徒歩。森での撮影となると、コンビニも自動販売機もない。2リットルの水を背負って木々をかき分け、絶好の撮影場所を見つける。
 大切にしているのは「伝えたい思いを込めた写真」を撮ること。佐世保市俵ケ浦町では、木々に囲まれながら、夕日が映る海岸線を見つめる人の後ろ姿を収めた。作品名は「ちっぽけな僕」。「自然の雄大さと比べたら、日々の悩みは小さい」と前向きな思いを込めた。
 四季ごとに異なる顔を見せる自然に魅了され、同じ場所に何度も訪れる。「季節ごとの違いを残すのも楽しい。好きだから、撮り続けられるんだろうな」
 値段は購入者に決めてもらう。「商売ではなく、自然から伝わるメッセージ性を感じてもらいたい」との一心から。個人や団体からイベントの撮影依頼などもあり、着実に実績を積み重ねている。今後は、動画撮影にも挑戦するつもりだ。
 「撮影は自分にとって、生きるモチベーション。これから進化していく自分が楽しみ」。二十歳の若者が見るファインダー越しの世界には、無限の可能性が広がっている。

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