新松浦漁協(松浦市鷹島町、渡邉勝美組合長)は、長崎県や同市の支援を受け、養殖トラフグの輸出に乗り出す。2月上旬、マレーシア、シンガポールで松浦産トラフグの試食会や商談会を開いた。漁協自ら養殖トラフグを海外でセールスするのは県内産地で初めて。高級食材のトラフグは景気低迷にコロナ禍が追い打ちをかけ、国内需要は縮小傾向。同漁協では海外販路開拓に期待を寄せている。
長崎県は養殖トラフグの生産量日本一。特に松浦市は、市町村別生産量が発表されていた2007年から18年までの12年間に9回も全国トップとなった一大産地だ。
同漁協が輸出に着目したのは昨年、シンガポールで養殖トラフグの白子や皮、ヒレの流通が解禁されたことがきっかけ。これまでは筋肉部位に限られていたが、ヒレや皮を付けた「身欠き品」も輸出できるようになった。
同漁協は生産者と連携し「県産水産物海外販路新規開拓チャレンジ支援事業」の補助金を受け、2月からマレーシア、シンガポールでの市場調査に着手。「松浦産トラフグをもっと知ってもらおう」と県や市の担当者、現地で水産物の取り引き実績がある商社の協力で、マレーシアのレストラン2カ所で試食会をした。
3日、同国首都のクアラルンプール市で開いた試食会には約150人を招待。訪日時にトラフグを味わった経験がある人も多く、松浦産は好評。早速、試験的にトラフグ刺し身20グラム入り200パックの注文もあった。会場では養殖マダイやブリ、マグロ、シマアジの冷凍製品も持ち込み、松浦の魚全般をPRした。
シンガポールで開いた商談会では、渡邉組合長や同漁協水産加工場の椎山篤工場長が松浦産トラフグのブランド「鷹ふく」について説明。飲食店関係者からは品質や数量、価格などの問い合わせがあったという。
市水産課の戸塚悟課長は「現地の人に思った以上に好んで食べられていた。輸出はスタートに立ったばかりだが、日本一の産地として売り込んでいきたい」。
椎山工場長は「試食会で品質の良さは伝えられた。養殖業は原材料や餌代、冷凍庫の電気代など経費の高騰で厳しい状況にある。輸出への期待は大きいが、輸送費や仲介する商社の手数料なども考えると、見合う価格の設定交渉など課題は多い」と話した。