素朴で丈夫 がま細工作りピーク 真庭・蒜山、丁寧に手仕上げ

素早い手つきでがま細工を仕上げる女性たち

 真庭市蒜山地域の岡山県郷土伝統的工芸品「がま細工」が製作のピークを迎えている。地元に生育するヒメガマとシナノキという天然素材を使い、素朴な風合いと丈夫さが特長だ。熟練の女性たちが1点ずつ丁寧に編み上げ、作業は5月ごろまで続く。

 14世紀の南北朝時代に兵糧を運んだ背負い籠が起源と伝わる。軽くて防水性に優れ、30年は持つとされるほど壊れにくく、雪深い蒜山の冬の手仕事として受け継がれてきた。

 今季は蒜山蒲(がま)細工生産振興会(8人)のメンバーが昨年11月末から、同市蒜山下徳山の作業場で製作。乾燥させたヒメガマや、シナノキの皮でできた小縄を使い、手提げかばんや草履、鍋敷きといった多彩な製品に仕上げる。作業場には「こもげた」や「つちのこ」と呼ばれる専用の木製道具を動かす「カランコロン」という音が心地よく響く。談笑しながらも素早い手つきは止まらず作業は進む。

 製品は地元の道の駅や観光施設、関東の百貨店などに並ぶ。人気で売り切れることもしばしば。振興会最年少の杉村礼美さん(53)=同市=は「使い込むほどにガマがあめ色になり、風合いの変化も味わえる。次の世代に引き継いでいきたい」と思いを込める。

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