廃棄食材加工の缶詰 市販化に挑戦 倉敷の団体 量見直し手ごろ価格に

 廃棄される肉や魚などの食品を缶詰に加工し、生活に困窮する子どもらに無償で届けている「一般社団法人コノヒトカン」(倉敷市笹沖)。いま、市販化という新たなプロジェクトに挑戦している。

 「コノヒトカン」は食品ロスを削減したり、子どもの貧困問題の解決につなげたりするため、ネイリストの三好千尋さん(41)=倉敷市=が2020年5月に前身の団体を立ち上げて開発に着手。岡山県内の児童養護施設や子ども食堂に届けてきたほか、活用法を考える高校生対象のアイデアコンテストを開くなど活動の幅を広げてきた。

 一般販売することで「県内のみならず、全国の皆さんに手に取ってもらい関心が高まれば」と三好さん。購入して取り組みを支えたいという声に応える狙いもある。今夏にも販売を開始しようと試作などを行っている。

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 新型コロナウイルス禍で苦しむ飲食店の支援に取り組んでいた三好さんは、活動を通じて食品業界で廃棄が多い実態を知った。有効活用する方法を考える中で思いついたのが「コノヒトカン」のプロジェクトだった。

 実現に向け取り組み始めるも、道は険しかった。食材の仕入れ先や製造工場、配送方法の手配といった課題をクリアしながら、缶詰にしたときの味の変化に対応するため試作を重ねた。2021年10月、ようやく完成にこぎつけた。

 現在製造している缶詰は、カレー粉で下味を付けたサバやサケのあらを野菜とともに炒めた「サカナ」、牛肉や牛脂をトマトで煮込んだ「ニク」の2種類。1缶(約160グラム)をご飯2合にまぜれば3~4人分の食事になるという。

 市販化に際し、さまざまな創意工夫を凝らす。気軽に買い求めやすくするため量を半分(約80グラム)とし、手ごろな値段に抑える方針だ。

 中身も、コストダウンを狙いに新しいレシピを模索する。「サカナ」は、漁で網にかかったものの流通せずに捨てられている「未利用魚」の使用を検討。「ニク」も加工方法の改良を考えている。また調理は、缶詰のラベル貼りを委託している障害者就労支援事業所に任せ、仕事の創出に貢献する考え。

 取り扱いは岡山県内のデパートのほかに、全国34店舗と海外で展開する缶詰専門店を予定。月に2千個の販売を目指す。

 三好さんは「市販化が軌道に乗れば、子ども食堂などへの無償提供を長く続けていく仕組みができる」と笑顔を見せる。ふるさと納税返礼品への参入、企業の災害備蓄への活用などの計画も同時に進めており、「缶詰から始まる物語」は着実に広がっている。

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