トレードは年3~4回?株式投資初心者が売買すべき局面とは

日々、株価は上下し、その理由はさまざまあります。株式投資をはじめると、いつ買うべきか・いつ売るべきか、悩む方が多いのではないでしょうか。

そこで、副業アカデミー「株式投資講座」の講師を務める山下勁 氏の著書『株チャート最強の教科書』(SBクリエイティブ)より、一部を抜粋・編集して株式投資初心者が売買すべき局面について解説します。


狙ったチャンスが来るまで「何もしない」が基本

■初心者は年3~4回のトレードでいい

トレードでは4~8%の利益をコンスタントに狙うと言いました。初心者ならトレードするのは年3~4回、それで8%の利益を上げるのを目標にすればいいと思います。

狙ったチャンスが来たらトレードすればいいのですが、来なかったら何もしないのが基本です。

これから解説しますが、ここはエントリーポイントだという根拠が持てる局面を待って売買すべきです。

しかし、初心者にとっては、「何もしない」ことはなかなか難しいのです。たいした根拠もないのに、なんとなく売買したくなってしまうからです。

どうやら、「自分より儲けている人がいて悔しい」「あの人はあんなに稼いでいるんだから自分も稼がなきゃ」といった心理が少なからず働くようです。

あるいは、「1万円プラスで利益確定したら、その後、株価が上がって、もう少し手じまいを待っておけば6万円も稼げたのに、悔しい……」。

そんなふうに考える人もいます。

■利益確定後にさらに上昇しても気にしない

しかし、僕は1万円を狙って取りにいったトレードで、1万円が取れたのなら、その後上昇してもまったく気にしません。狙った1万円を取る─これを積み上げていくだけです。

これはユニ・チャーム(8113)の日足チャートです。

2021年10月25日(終値4420円)、下げ止まりと判断できるので、この日に買ったとしましょう。大きく下げたときは、その後2日くらい上昇するというのがよくあるケースなので、28日(終値4536円)に手じまいします。すると3%ほどの利益です。

あるいは、ここで手じまいしないで、中期移動平均線にぶつかる11月1日(終値4680円)まで保有して、手じまいすると6%ほどの利益です。

さらに、なんとなく持ち続けた人は、11月22日(終値4923円)には約11%の利益が取れています。

それを悔しいとか、うらやましいなどと思わないでください。自分と人とを、相対的に比べる必要はありません。

人と比べず、自分のトレードを達成しよう

「なんとなく、持っていたら11%儲かった」は運でしかなく、そんなトレードがこの先、ずっとできるはずがありません。

みなさんには、次章で説明する「根拠のあるトレード」をしてもらい、コンスタントに4~8%の利益を積み上げていくことを目標にしてもらいたいのです。これは人のトレードを相対的に比べるのに対して、自分の目標を達成する「絶対的なトレード」といってもいいかもしれません。

4~8%を取るトレードは、小さな利益に見えるかもしれません。でも、これを積み上げた結果、株で「億」を稼ぎ出せる投資スタイルにつながっていったのです。

全資金を投資に回すよりも現金化して残しておく

■現金で保有しておくのはもったいない!?

運用資金ですが、すべてを投資に注ぎ込んでしまうのではなく、半分は購入資金として残しておきましょう。

少し話はそれるかもしれませんが、資産は現金で持っているのはもったいない。それよりも不動産、債券、株式などにして運用したほうがいい、という話を聞いたことがあると思います。

この話の前提条件は、「勝てる投資」ができることです。

しかし、誰もが投資に勝てるわけではありませんよね。

普通の人が勝ち続けるとは考えづらく、どこかで負ける投資をしてしまうものです。

負けたら資金は減ります。それは「もったいない」と思いませんか?

でも、現金で持っている限りは、減りません。ですから、資産をすべて投資につぎ込むより、実は現金で持っているほうが強いのです。

そして、ここぞというチャンスのときだけ、運用すればいいのです。投資の資金も同様で、チャンスが来たときに投入できるよう、常に現金を残しておきましょう。

想定外の動きをしやすい「決算」は持ち越さない

■翌日、決算日という銘柄は避ける

決算発表(四半期も含む)があると内容が良くても悪くても、出来高が急に増えて株価が大きく上下することは珍しくありません。

増収増益でストップ高もあれば、想定内といった理由で下落することもあります。減収減益でも「悪材料出尽くし」といった理由で、上昇することすらあるのです。

上昇も下落も、通常の動きなら、だいたい予測通りに動くので対処できます。しかし、決算日の上下は想定外の動きです。ですから、決算日前には手じまいしますし、翌日、決算日という銘柄は取引しません。

例えば、山崎製パン(2212)。決算日には株価が上下に跳ねることが多く、もし決算日に持ち越してしまったら、大きな損失を出す恐れがあります。ですから、このような銘柄もトレード対象外です。

決算日に想定外の動きをする銘柄かどうかは、過去のチャートを見ればわかります。

■1日で約20%の下落という場面も

このチャートは、日本ペイントホールディングス(4612)です。2015年8月10日に決算発表でした。10日の株価ですが、始値767円、高値785円、安値758円、終値773円です。

それが翌日は始値657円、高値657円、安値633円、終値614円。159円の下げで約20%も落ちています。決算発表をまたぐというのは、このようなリスクに遭遇する可能性があることを意味しているのです。

■年末年始、連休、選挙も持ち越さない

決算もそうですが、年末年始、ゴールデンウィークなどの連休も持ち越さないほうがいいでしょう。

休みの間に何が起こるかわからないからです。ダウ平均が暴落するかもしれないし、とんでもない災害や事件が起きるかもしれません。

僕の知人のなかには、週末すら持ち越さないという人もいます。

最初に選挙が原因で株価が上下することがあると言いました。ですから、選挙の前も手じまいしておくことをおすすめします。日本国内の衆議院選、参議院選もそうですが、アメリカ大統領選の結果によってもダウ平均は大きく動き、その影響で日経平均も予想外に動くことがあります。

投資対象は、時価総額5000億円以上の安定銘柄

■「安定している企業」の定義とは?

僕がトレードの対象にしているのは、時価総額5000億円以上の銘柄です。

実は重要なのは、時価総額の数字ではありません。時価総額の大きさによって、「安定している企業」を選ぶことを重視しているのです。ですから、本当は時価総額5000億円でなくてもかまいません。

僕が考える「安定」の定義には、次の条件が当てはまります。

・数十年の歴史があること
・収益の柱がいくつもあること
・大株主がワンマンではないこと(オーナー持ち株比率の高いワンマン経営ではない)
・経営方針などの議論ができ、考え方が右にも左にも大きく振られない

このような企業だと、株価の動きが安定しやすいのです。

■過去のチャートからも「安定銘柄」はわかる

株価の動きが安定しているかどうかは、過去のチャートを見れば判断できます。過去数年間のチャートが、ゆるやかな変動をしていれば安定と言えます。昨日下がって、今日上がるような、一見、ぴょんぴょん跳ねているようなチャートではなく、ゆるやかに推移しているチャートです。

5000億円以上で「安定銘柄」の代表は、JR東日本(東日本旅客鉄道9020)、NTT(日本電信電話9432)、トヨタ自動車(7203)などです。まず10年先にもつぶれる心配のない、安定している企業だと誰もが納得できるでしょう。

5000億円以下だと、東洋製罐グループホールディングス(5901)、日本水産(1332)のような企業です。東洋製罐は缶だけでなく容器全般の製造と販売を行っている創業100年以上の老舗です。日本水産は水産大手で創業1943年、80年近い老舗です。

時価総額は、東洋製罐が4000億円未満、日本水産が2000億円未満(2022年2月)ですが、両社とも新市場の「プライム銘柄」の上場維持基準に適合しています。

株価も安定しています。

■時価総額が大きくても安定していない企業

反対に、時価総額は大きくても「安定していない企業」といえば、製薬会社が当てはまります。

例えば、エーザイ(4523)。時価総額は1兆円以上ですが、過去10年間のチャートを見ると山あり、谷ありで株価が飛び跳ねているといった感じです。エーザイのような製薬会社の場合、新薬の開発で株価が跳ね上がることもあれば、新薬の治験中断というニュースで急落することもあります。

僕は、ニュースで話題になった銘柄はできるだけ避けるようにしています。これについては、次の項目で詳しく説明していきます。

ニュースで話題になった銘柄は避ける

■トレードは自分の考えで行う

日本経済新聞社の有料サービスで毎朝、メールでいち早くニュースを配信するサービスがあります。僕はそれを利用していますが、ここで記事になった銘柄はトレードしません。

だいぶ前の話になりますが、アスクル(2678)という銘柄が好きでよくトレードしていたのですが、2017年2月に物流センターが火事になり、ニュースで大きく取り上げられました。それ以来、運用対象外になっています。

ソフトバンクグループ(9984)も、ZOZO(3092)も、チャートを見てよほど大きなチャンスだと判断できるとき以外は、同様の理由でトレードはしません。

ときどき、YouTubeなどで著名なトレーダーが「この銘柄がいい」と言うのを聞いて、買ったら翌日から下がって含み損を抱えているという話を聞きます。

YouTubeにしろ、SNSにしろ、誰かが推薦したからという理由だけで売買するのはやめましょう。

人の考えでなく、トレードは自分で考えてすべきです。

もし、人の意見を聞いて売買して、失敗したとわかったら、その時点で損切りをしてください。根拠のないトレードをして、「入り口」が間違っているのですから、そこから戦って、なんとかプラスにしようなどと思わないことです。

そして、二度と人の意見でトレードしないよう反省してください。

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著者:山下 勁
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