保険の重複加入、何がよくない? かぶりやすい保険とお金を無駄にしない入り方

自動車保険、火災保険などの申込時、他に同じ目的の保険に入っていませんか?というチェック項目があります。1台の車に保険をふたつ掛ける人はいないかもしれませんが、細かい項目の重複は見逃しがち。家族で違う保険会社に加入していると、重複している補償に気づかないことも。どのような点に注意すれば無駄が省けるか、チェックポイントを解説します。


保険の重複とはどういうこと?

ひとくくりに保険と呼びますが、保険は大きく分けると、「相手に対する保険」と「自分に対する保険」に区分されます。

相手に対する保険は、自動車保険で代表されるように、賠償責任という名前がついており、他人に迷惑をかけてしまったことに対価を払うものです。償い補うという意味から、損害保険と呼ばれる自動車保険や火災保険には「補償」の字が使われます。

自分に対する保険は、生命保険の医療保険・がん保険に代表されるように、自分のリスクのための保険をいいます。病気やケガなどで人生に差し障りがあった時、暮らしを保つために、「保障」という字が使われます。

同じ保険ではありますが、「ほしょう」の字の使い方から保険の意味合いがだいぶ違うことがわかります。

主に保険の重複は、家族内での共有がうまくいっていない場合に起きます。親や配偶者がすでに自分のために入っている保険を知らずに、新たに保険をかけてしまう場合などです。重複は避けたいものですが、生命保険の場合はそれぞれの保険から支払われますので、手厚い保障を受けられます。適正な保障を持つことが大事ですが、まったく無駄になるわけではありません。

生命保険に比べ、重複が無駄になる場合が多いのが「損害保険」です。損害保険は、ものにかかる保険が多いことから、ひとつのものにひとつの補償が原則です。1台の自動車に2つの保険をかけてしまうと別々の保険会社でかけたとしても、マッチングがかかり、どちらか一つを取消すことになります。

特約に関しても、ひとつの特約の対象が同居の家族全員と対象範囲が広かったり、保険金額の上限が無制限に設定されており、重複加入していたとしても、複数の保険会社から支払われるケースが少なかったりするため、かけた保険料が無駄になるわけです。

どんな特約が重複しやすいか?

ひとつの保険に特約を付けていれば、同居の家族全員が補償の対象となるものは、重複しやすいので要注意です。重複しやすい特約には、以下の様なものがあります。

日常生活賠償特約

自動車保険、火災保険、傷害保険などに付けることができる特約で、個人賠償責任特約という特約名の場合もあります。

日常生活の偶然な事故で、他人にケガをさせたり、他人のものを壊してしまい損害賠償金を負担したりした場合に、保険金を支払う特約です。保険金額の上限は1億円、3億円など様々ですが、近年では無制限補償が主流となっています。自転車で歩行者にケガをさせ、後遺障害を負わせてしまったような場合、過去に高額な賠償を求められた例もでています。お子さんをお持ちの家庭では、自転車通学が必須となる地域もありますので、一家にひとつ備えておきたい特約です。特約保険料は、年間で1500円~2000円程度。

人身傷害保険の交通事故特約

自動車事故によって、自分がケガをしてしまった場合の損害額を補償する人身傷害保険の対象範囲を広げる特約です。自動車に搭乗中の事故以外に、電車・バス乗用中や駅構内における事故、自転車乗用中の事故、契約の自動車以外の自動車に乗用中の事故など、交通乗用具に関連する事故によるケガを補償する特約です。通勤・通学に自転車・バス・電車を使用している家庭には必須特約です。特約保険料は等級による割引により幅がありますが、年間で8,000円~15,000円程度。

ファミリーバイク特約

原動機付自転車いわゆるファミリーバイクの特約です。ファミリーバイクを単品で引受ける商品ももちろんありますが、自動車保険の契約がすでにあるひとは、特約を付けた方がお得です。自転車同様、車より手軽で便利な乗物ですから、近場の移動にはとても便利。数台持っている家庭もあります。この特約をひとつ付けておくと、複数台のバイクを補償してくれますから、さらにお得です。年間保険料は補償内容によって違いますが、年間で約10,000円~25,000円程度。

このような特約は、補償の対象が、記名被保険者(保険契約に明記されている主に補償の対象となるひと)、記名被保険者の配偶者、記名被保険者またはその配偶者の同居の親族・別居の未婚の子、です。

例えば、Aさん、Bさん(Aの配偶者)、Cさん(A・Bの長女)、Dさん(Bの妹)、Eさん(Aの父)5人が同居の場合、Aさんの保険に特約が付いていれば、その他4人の保険に特約が付いていなくても、Aさんの特約を使うことができます。

さらに、A・Bさんの長男Fさんが別居している場合、Fさんが未婚であれば、同じくAさんの特約を使うことができるのです。

Aさん以外の5人が、それぞれ別の窓口で別々に自動車保険に入っている場合は、一度家族がどのような補償に入っているか確認してみましょう。重複があった場合、ひとりにつき、年間1万円以上保険料を安くできるかもしれません。

保険料が無駄になりにくい保険の入り方

保険会社、保険に入る窓口をひとつにまとめると、重複防止の効果は高まります。自動車保険に加入する窓口は、自動車購入先、ネット通販、知り合いの保険代理店、ショッピングモールの保険窓口など様々です。お付合いもあるし、勧誘、紹介もあるとなると、家族がバラバラの保険に入ることはよくあることです。

バラバラの保険に入っていると、それぞれの担当者から重複確認の話は出るかもしれませんが、満期もまちまちですから、保険証券を持ち寄って相談しない限り、特約のチェックはなかなか難しいものです。

ひとつの保険会社、ひとつの窓口でまとめると、重複チェックはかなり簡単になります。
窓口は別でも、保険会社が同じだと、システムチェックがかかり注意喚起されるからです。さらに窓口がひとつになると、システムだけでなく、担当者のチェックもかかりますので、重複を防げ、重複していた保険料を節約することができます。

車社会の地方では、通勤通学に車は必須ですから、一家に1台ではなく、ひとり1台の家庭が多くあります。複数台の家庭では、自動車保険をひとつの契約にまとめる方法が保険料節約には効果的です。まとめることで割引が適用され、保険料が安くなりますし、満期日が統一されることで管理もしやすくなります。一度、まとめた保険料を試算してもらい、どの位効果があるか比べてみましょう。

重複部分がないように整理した後、注意点があります。特約の付保もれです。

例えば、以下のようなパターンです。

・結婚のため親と別居になった場合:
同居中は親の特約で補償されていましたが、婚姻して別居したことで補償対象外になってしまいます。新たに付ける必要があります。

・離婚した場合:
特約の補償対象は配偶者ですから、配偶者に特約が付いていたとしたら、離婚後同居していたとしても、配偶者でなくなった時点で補償対象外です。こちらも新たに付ける必要があります。

・高齢となり車を手放し、保険を解約した場合:
解約した保険に特約が付いていたとしたら、他の保険がすべて補償対象外となってしまいます。いずれかの保険に特約を付替えなければ付保もれになってしまいます。

このように、家族のライフステージが変わった場合は、保険担当者またはコールセンターに問合せ、補償内容の見直しをして、付保もれを防ぎましょう。

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