キャッシュレス時代だからこそ「現金」が重要。万一の地震に備えておきたいお金のこと5つ

2011年の東日本大震災から12年です。

日本にはさまざまな災害があるため、一人一人の備えが大事です。保存食や水など、自宅や持ち出し袋のストックは大丈夫でしょうか。

また、「お金」についても備えておきたいこと、知っておきたいことがあるのです。今回5つお伝えしますので、ぜひご家族やお知り合いの方と一緒に、確認してみてください。


1. キャッシュレス時代だが、災害時は「現金」が重要

キャッシュレス利用率が上がっています。クレジットカードや交通系ICカード、QRコード決済を利用する機会がかなり増えているかと思いますが、災害時には停電や端末障害・システム障害などにより、すべて使えなくなる恐れがあります。

また、スマホを用いるQRコード決済は、簡単にスマホの充電ができない状況では、利用をためらう場面も出てくるでしょう。

災害時には、電気もスマホも不要の「現金」が使い勝手がよいものです。いざというときに備えて、小銭やお札などを、自宅に保管しておくことをおすすめします。非常持ち出し袋を準備している人も、必ず現金を入れておきましょう。

2. 特に「千円札と小銭」を多めに常備

災害時に備えて現金を保管する際には、1万円札や五千円札よりも、千円札や小銭を多めにしておくことをおすすめします。小さな金額の買い物を1万円札や五千円札などで支払った場合に、お店でたくさんのおつりがないケースが考えられるからです。

また、水害により、お札が濡れて破れて、お店ですぐに使えなくなるかもしれません。銀行に行けば交換してもらえますが、すぐに行けない可能性もあります。防水性を考えてジッパー付きのビニール袋に入れておくほか、500円玉などの小銭を多めに混ぜておきましょう。

ちなみに筆者の家では、プラスチックケースに、常に小銭を多めに入れています。家族にも「何かあったらここから使ってね」と伝えています。100均などでも売っているプラスチック製のコインケースなら、10円玉、100円玉と硬貨の種類別に入れられ、枚数が把握しやすいですね。

ただし、多額の現金を常備して盗難にあうことのないように、家族以外はわかりにくい場所に保管するなど、十分気をつけてください。

3.公衆電話用に「10円玉数枚」を持ち歩く

東日本大震災の際に筆者は銀座にいたのですが、帰宅のため長時間歩いているときに、公衆電話に長い行列ができているのを見かけました。

災害時に「携帯電話はつながらなかったが、公衆電話ならつながった」という体験を見聞きした人も多いでしょう。

その際に、10円玉があると安心です。家にストックしておくほか、外出時には財布に何枚か入れる習慣をつけておきましょう。

4.複数の銀行口座を持っておく

大手銀行のシステム障害がときどきニュースになりますが、システム障害はいつでも起こる可能性があるものです。災害により銀行の店舗やATMが閉鎖になることもあります。

東日本大震災の2年後に、一般社団法人全国銀行協会より出されたレポート(一般社団法人全国銀行協会「東日本大震災における銀行界の対応と今後の課題」平成25年3月)、によると、震災直後には、銀行、信用金庫、信用組合等の金融機関は、東北6県および茨城県に本店のある72金融機関の全営業店2700のうち、1割強に相当する約280店が閉鎖となりました。その後、2011年3月28日には約170か店、4月25日には114か店となり、震災発生から約半年後の9月12日には55か店、2012年11月30日では41か店が閉鎖となっています。

「家の近くに銀行の窓口があるから、いつでも駆け込んでお金を引き出せる」と思っていても、被害状況によっては不可能かもしれないと、頭に入れておきましょう。

もし銀行口座が一つしかないと、「あの口座に全財産の500万円が入っていて、近所のATMが壊れていて引き出せない。隣にある別の銀行のATMはあいているのに…」という可能性があります。そのため、銀行口座は複数持っておくことをおすすめします。

特にネット銀行なら、さまざまなATMと提携していることが多く、外出先でも近くのコンビニATMから引き出しやすいかもしれません。メインバンクのキャッシュカードは自宅に置いている人でも、普段からネット銀行口座のキャッシュカードを1枚、持ち歩くのもいいでしょう。

5.通帳やキャッシュカードがなくても、銀行から出金できる可能性がある

災害により通帳やキャッシュカードを紛失した場合でも、銀行で出金できる場合があります。東日本大震災では、金融庁から、銀行や信用金庫、信用組合等の金融機関にさまざまな要請がありました。

例えば、通帳やキャッシュカードがなくても本人確認をして払い戻しに応じることや、印鑑がない場合は拇印にて応じること、事情によっては、普通預金だけでなく、定期預金などの期限前払い戻しに応じること、などです。キャッシュレス決済が使えず、手元の現金が尽きてしまった場合などに対応してもらえる可能性があります。災害の際は、ネットがつながれば金融庁や金融機関のサイトで確認するほか、店舗に相談してみましょう。

今回は、東日本大震災から12年経った今、防災のためにお金まわりの備えや知っておきたいことを5つお伝えしました。一人一人が備えておけば、大きな混乱を少しでも防ぐことができ、身の安全と安心感につながります。ぜひ、家族とも話し合っておきたいですね。

参考情報:政策提言レポート 東日本大震災における銀行界の対応と今後の課題 (zenginkyo.or.jp)
平成23年(2011年)東北地方太平洋沖地震にかかる災害に対する金融上の措置について:金融庁 (fsa.go.jp)

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