無名の存在からプロ注目右腕に上り詰めた大師高の沢田寛太には、二人三脚で成長曲線を描いてきた恩人がいる。2016年9月から同高トレーナー兼投手コーチを務める佐藤颯さん(27)。週1日練習に参加し、投手に必要な知識やトレーニングを注ぎ込んできた。「1から100まで全部を教えてもらった。全て信用している」と沢田。高校からプロへの扉は開かれなかったが、2人の歩みが止まることはない。
昨年10月20日。プロ野球ドラフト会議の記憶は佐藤さんにも苦く焼き付いている。「人生で一番言葉に詰まる瞬間だった」と初めて味わう悔しさだった。
沢田が捕手から投手に転向した1年秋の直球は130キロ台前半。「正直インパクトはなかった」と佐藤さん。筋肉のケアや関節の正しい使い方に始まり、ホワイトボードに図解付きで変化球の仕組みなど細かいノウハウを教え込んだ。
目の色が変わったのは最速が147キロに達した2年秋。「短期間でここまで上がった選手はいなかった。話が変わってくるぞ」。本気で夢舞台を目指すようになった。
佐藤さんは沢田を「頭が良い選手」と評する。自分の体や感覚と向き合える力があるという。練習では自主性を尊重する半面、甘えも許さなかった。「意外とさぼり癖がある。意識を植え付けるのが大変だった」。嫌われてもいいと心を鬼にし、剛腕に寄り添った。