1966年、静岡県旧清水市(現静岡市清水区)でみそ製造会社の専務一家4人が殺害されたいわゆる「袴田事件」で、東京高裁は3月13日午後、弁護団の再審請求を認め、袴田巖さん(87)の再審=裁判のやり直しを決定しました。東京高裁で裁判長も務めた元裁判官で、現役時代に30件の無罪判決を確定させた経験をもつ木谷明弁護士(85)に、今回の東京高裁の判断について聞きました。
<木谷明弁護士>
「とにかくよかったなという思いに尽きます。5年前に当然こういう結論が出るべき事件でしたが、改めて今回、再審開始になってよかったと思います」
<滝澤悠希キャスター>
Q木谷さんはこの決定を予想していましたか?
<木谷明弁護士>
「今回に限っては、まさか取り消しはあるまいと思っていましたが、私の期待はときどき裏切られるので、まさかそういうこと(再審開始取り消し)はあるまいと思いながら、おそらく棄却だろうと思っていました」
<滝澤キャスター>
Q判決内容をご覧になってどう思いますか?
<木谷弁護士>
「まだ細かく読み解いていませんが、みそ漬け実験の結果は弁護団の主張に沿う認定になっています」
<滝澤キャスター>
Q赤みが残る可能性があると検察側は主張していましたが、黒くなるという弁護団の主張が認められたと?
<木谷明弁護士>
「常識に沿う判断ですよね。1年以上経った血液があんな赤い色をしているとは常識的に考えられないわけですから、それが科学的に裏付けられたということで、正しい判断だろうと思います」
<滝澤キャスター>
Q姉のひで子さんや弁護団の言葉を聞いてどう思いましたか?
<木谷弁護士>
「本当によかったと思いますよ。これ以上長引かせたら、裁判官をしていた者として、本当に申し訳ない気持ちになります。こんなに長いことかけなければならなかった事件ではないと私は思います」
<滝澤悠希キャスター>
Q裁判の仕組みの改善が必要ということでしょうか?
<木谷明弁護士>
「(改善点は)3つあります。(1つ目は)再審の裁判のやり方については、全然法律が規定していない。いつ、どのような手続きをしなければいけないということが全然書いていない。だから、裁判官がほおっておくことができる。(2つ目は)再審事由があるかどうかを決めたくても、検察官が持っている証拠を弁護側が見ることができない。検察官が被告に有利な新証拠を隠してしまうことが可能になっている。最終的には、再審開始決定が出ても、検察は抗告をして長引かせることができると、この3つが(再審が長引く)大きな原因だと思います」
<滝澤キャスター>
Q検察は特別抗告をするでしょうか?
<木谷弁護士>
「私は今回に関しては、しないんじゃないかと予測しています。最高裁で疑問とされた点について、差し戻された高裁で検察側の主張の立証が成功しなかったわけで、結局、最高裁の段階で再審開始してもよかったのに、最高裁は慎重にメカニズムを検討しなさいとして戻しました。メカニズムを検討した結果、弁護側の主張の方が正しいとされています。それで私は検察官の弁論・最終意見もみましたけど、もう一つ説得力がありませんでした」