女性の起業が福井県内で増加「働きやすい環境を自分で」 飲食や美容…自宅使い少額投資でオープン

自宅の一室を改装し、弁当のテイクアウト店をオープンした宮下昇子さん。福井県内で女性の起業が増えている=福井県福井市みのり4丁目

 福井県内で女性の起業が増えている。日本政策金融公庫福井・武生両支店によると、2022年4月~23年1月に創業支援の融資を実行した県内の女性起業件数は27件で、前年同期比約1.7倍。飲食や美容関連が多く、自宅を使って少額投資で開業するケースが目立つという。また創業支援の融資を受けた起業家のうち女性比率も高く、日本公庫の調べでは、本年度上半期の福井県の比率は39.3%で全国5位となっている。

 3人の子育てをしている宮下昇子さん(34)は、福井市みのり4丁目の自宅の一室を改装し、弁当のテイクアウト店「孫心(まごころ)」を昨年末にオープンさせた。店は宮下さん1人で切り盛りし、塩こうじなどの発酵調味料を使ったヘルシーな弁当をつくり、販売している。

 調理学校を卒業後、居酒屋や飲食店の社員、パートなどの勤務経験があり、飲食関係の起業にあこがれていたという。「本来はテナントなどで店を構えたいところだけど、新型コロナウイルス禍や子育てに忙しい家庭環境も踏まえて、大きなリスクは避けたかった」と宮下さん。日本公庫の融資も最小限に抑えた。「自宅でもやりたいことに携われるのが一番。子どもたちの顔をいつでも見られるし」とほほえんだ。

 日本公庫福井支店によると、県内での創業前段階の融資件数は22年4月~23年1月で66件。うち女性は27件で、20年度同期の14件、21年度同期の16件と比べて大幅に伸びている。

 福井支店の担当者は「コロナ禍で外で働けなくなった女性らが、コロナの落ち着きとともに起業マインドが向上し、自宅でできる仕事として開業するケースなどが目立つ。基本的に少額の創業資金で始める人が多い」と分析する。

 福井商工会議所の開業サポートセンターへの女性の相談件数も、21年度は前年度比2.5倍で過去最多の110人に上った。本年度上半期も21年度同期を上回る64人が開業相談に訪れている。担当者によると、エステサロンやネイルサロンなどの美容関連が多く、雇用主から独立を促されたケースや、コロナ禍を契機に退職して経験を生かして開業を検討する相談などがあるという。

 宮下さんは起業前に女性の異業種交流会に参加した際、周囲でも起業を希望する声が多かったという。「自分の働きやすい環境を自分でつくりたいという女性が増えている」と話した。

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