トヨタ、3年ぶりのWRCメキシコで今季2勝目を狙う。ラトバラ代表「信頼性がカギになる」

 WRC世界ラリー選手権に参戦しているTOYOTA GAZOO Racingワールドラリーチーム(TGR WRT)は、3月16日から19日にかけて、メキシコで開催される2023年シーズン第3戦『ラリー・メキシコ』にワークス3台+1台の計4台体制で挑む。

 ワークスノミネートを受けて今戦に出場するのは、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)とエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)、セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(トヨタGRヤリス・ラリー1)の3組だ。前戦スウェーデンで3台目のマシンをドライブした勝田貴元/アーロン・ジョンストン組は4台目のトヨタGRヤリス・ラリー1でWRCメキシコに初挑戦する。

 ラリー・メキシコがWRCの一戦として開催されるのは、オジエがトヨタ・ヤリスWRCで勝利を飾った2020年以来、3年ぶり。プラグイン・ハイブリッドシステムを搭載したラリー1マシンが同イベントで走るのは今大会が初めてとなる。

 そんなラリー・メキシコは、同国グアナファト州のレオンを中心に行われるグラベル(未舗装路)ラリーだ。計23本のSSは主にレオン周辺の山岳および丘陵地帯に設定される。メキシコのステージの特徴のひとつに高地であることが挙げられ、最高地点は2700mを超える。これは富士山の七合目に相当する標高だ。

 標高が高くなると空気中の酸素の量が減るため、エンジンの最高出力は低下する。また、高地でありながら最高気温は30℃前後と高いためエンジンの温度が上がりやすく、高い冷却性能が求められる一戦でもある。ラリー1カーに搭載されているモーターは内燃機関とは異なり低酸素の影響を受けないが、熱害に関しては例外ではなくエンジンと同様に適切な冷却が必要だ。

 また、ステージも一部に荒れたグラベル区間があるため、過去の大会と同じようにクルマの信頼性の高さが重要となる。

 レギュレーションでヨーロッパ以外の国での事前テストが禁止されていることから、TGR WRTは今戦に向けて、メキシコのグラベル路面や気象コンディション等を想定したテスト環境を設定し、スペイン南部でグラベルテストを実施した。

 このメキシコで過去6度の総合優勝を誇るオジエは、今大会でも優勝候補の一角だ。開幕戦モンテカルロに続く“連勝”を目指す元王者は、チームメイトで現王者であるロバンペラや、同じく僚友のエバンスよりもデイ1~2の出走順が遅い5番手であるため、一層有利な立場にある。

 一方、もっとも厳しい戦いを強いられる1番手は免れたものの依然2番手と早い出走順となるロバンペラは、序盤の遅れを最小限にしたいところ。エバンスは僚友との間にティエリー・ヌービル(ヒョンデi20 Nラリー1)を挟み4番手出走となる。ラリー・メキシコ初出場となる勝田は7番手でラリーを開始する予定だ。

TOYOTA GAZOO Racing WRTのヤリ-マティ・ラトバラ代表

■「ふたたび優勝争いができることを期待している」とラトバラ代表

「数年ぶりにメキシコに戻ることになり、とてもワクワクしている」と語るのは、TGR WRTのボスであるヤリ-マティ・ラトバラ。

「メキシコの雰囲気はつねに素晴らしいが、ラリーはチームとドライバーにとって難しいチャレンジになる。メキシコは熱や標高など多くの課題に対処する必要があるんだ」

「このクルマでメキシコに出場するのは今回が初めて。そのようなコンディションでハイブリッド・テクノロジーを搭載したクルマを走らせるのも初めての経験となる。信頼性がカギになると考えられるため、チームは万全の準備をしようと努力してきた」

 表彰台を逃す結果となった前戦スウェーデンの後に行われるメキシコ・ラウンドについて、ラトバラ代表は好結果を持ち帰ることができると考えている。

「ステージの出走順も大きな要素だが、我々のドライバーたちの出走順は比較的良好だ。そのため、いい戦いができると考えている。とにかくラリーが楽しみだし、ふたたび優勝争いができることを期待している」

 今季第3戦として行われるラリー・メキシコは16日(木)の夜に、デイ1として全長1.12kmの市街地ステージが2本実施される。本格的なグラベルステージは翌日のデイ2から始まり、有名なエル・ショコラテ(SS3/SS6)を含む8本のステージを走行した後、一日の最後にスーパーSSが2本行われる。そのうちSS9“ラス・デュナス・スーパースペシャル”は、18日(土)のデイ3で2回、19日のデイ4(日)でも1回、合計4回走行する新ステージだ。

 競技3日目はシエラ・デ・ロボス山脈のステージを中心とする9本のステージを走り、最終日のデイ4は、今大会最長となる35.63kmのオタテス(SS21)を含む4本のステージを走行する。最終SS23“エル・ブリンコ”は、トップ5タイムを記録した選手とマニュファクチャラーにボーナスポイントが与えられる“パワーステージ”となっている。全部で23本のSS合計距離は320.71km。リエゾン(移動区間)を含む4日間の総走行距離は969.89kmに上る。

WRC第2戦スウェーデンのSS4でステージウィンを飾った勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(トヨタGRヤリス・ラリー1)

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