ジェンダーレス制服、学校や企業が導入…現場の声をリポート

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、近年増えつつある“ジェンダーレス制服”についてキャスターの田中陽南が取材しました。

◆女子がスラックス、男子がリボンもOK…選べる制服を導入

男子は学生服、女子はセーラー服というのは昔の話。今、さまざまなところで制服が変わりつつあります。

そのキーワードは"ジェンダーレス”。今回、田中が訪れた江戸川区立瑞江第二中学校は、制服を選べる学校として注目を集めています。

同校では、2021年度から生徒自身が制服を選べる制度を導入。女子がスラックスやネクタイ、男子がリボンやスカートを着用してもOKに。

滝澤校長は「自分で自分を表現できるような学校を目指すなかで、教育の現場を変えていこうという考え方の一環として、ジェンダーレスであったり、制服の変更に取り組みました」とその経緯を語ります。

選べる制服は生徒たちの間でも反応は上々で、「私はスラックスのほうが好き。他の女子もスカートが好きならスカート、スラックスが好きならスラックスと選べるようになったのは良い」(1年生 女子生徒)、「ネクタイは少し大人っぽくなった感じでいいなと思ったり、リボンもいいけど僕はネクタイのほうが好きなのでネクタイにした」(1年生 男子生徒)など、さまざまな意見が。

当初、制服を選択制にすると風紀が乱れるという声もあったそうで「教員は保守的なところがあるので、そういう声はありました。しかし、そうじゃないと。『子どもたちが学校を乱すわけではなく、環境を教員が作っていけばそんなことにはならない』と教員に話し、賛同してもらっていろいろと変えました」と滝澤校長。

瑞江第二中学校では、制服以外にもLGBTQに関する取り組みを行っており、例えば環境面ではトイレの色を青や赤など男性・女性をイメージする色を使わず統一したり、生徒名簿を男女混合にするなど、性別による区分けの撤廃に取り組んでいます。そして、2023年度には水着もジェンダーレス、男女で同じものを導入する予定だそうです。

◆男性のメイク&ネイルもOK…企業でも進むジェンダーレス化

制服のジェンダーレス化は学校だけにとどまらず、眼鏡ブランド大手「JINS」でも。以前は男女で異なる作りの制服を用いていたものの、2022年から完全に同じオーバーサイズのものを導入。

広報PR・ 金井さんによると、JINSではサステナビリティの推進を掲げさまざまな取り組みを行っており、そのなかでも従業員のダイバーシティ&インクルージョンの推進に注力。「ジェンダーレスの視点は世の中的には当たり前になってきているので、そういった意味で今の制服をデザインしました」と導入の理由を明かします。

制服をジェンダーレスにしたことで、店員の服装の自由度とともに作業効率も高まったとか。

実際、現場からも「ジャケット・コート以外はワイシャツでもスウェット生地でもセーターでも大丈夫なので、自分が好きなものを着られることは今の時代にとても合っている」、「動く仕事でもあるので、オーバーサイズというのはどなたでも着やすくなっている印象」といった声がありました。

その他にもJINSでは、男性のネイルやメイクもOK。時代に合わせ、社内ルールも変化し続けています。ただ、ここに至るまでには課題もあり「性別・年代問わず似合うものを探していくと色の選び方、統一のものを作るとサイズ感の設定も難しい。一緒のものを作るという難しさもありましたね」と金井さん。

社会が変化していくなか、「当たり前のことはどんどんと変わっていくので、企業として柔軟に対応していく姿勢は常に取り続けたいと思います」と語っていました。

今回、取材を行った田中は「瑞江第二中学校では、この制服を決めるにあたって生徒たちと話し合っていて、やはり現場の声を聞くというのもジェンダーレスの取り組みに大事だなと思いました」と感想を述べます。

株式会社ゲムトレ代表の小幡和輝さんは、選べる制服について「とても素晴らしいと思う。今の時代に合っている」と評価。しかし、選択肢が増えてしまうと原価が上がってしまうことも考えられ、小幡さんはそうしたデメリットを挙げつつ、JINSのように同じものを活用すればそれだけコストも下がるので「すごくいいこと」と感心。

株式会社ABABA代表の久保駿貴さんは、「男性はこれ、女性はこれと決めつけられていないところがいい。選択していくことを小さい頃から育んでいけば、その後の進路の選択などでも考え方が変わってくるのではないか」と好感を示します。

一方で、番組Twitterには「女子がズボンをはいたら即LGBT認定やめてね。あと男子はスカート履きにくいよね。でも服装ってもっと自由でいいでしょ。まだまだ難しいけど、制服着るかどうかから選べてほしいな」という声がありました。

この意見にインスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは「その通りだなと思う」と頷き、瑞江第二中学校やJINSの取り組みについても評価する一方で、「トランスジェンダーの方にとって必要な施策って、制服だけではないと思う」との意見が。

「シスジェンダーの人たちにとってはいい施策だと思うが、同時にそれで全てとしてはいけないと思った」と言い、「例えば、トイレの色も同じにすることは大事だけど、他の選択肢はないのか。そこまで含めてLGBTQ、ジェンダーの施策と言えるのかなと思う」とさらに一歩踏み込んだ形を期待すると、キャスターの堀潤は「コミュニケーションをとった上で、レッテルを貼るような固定観念からいかに脱却し、いろいろオプションを広げていけるか」と付け加えます。

◆女性だけでなく、男性のジェンダー問題も忘れずに

ちなみに、「女子高校生が着用したい制服のタイプ」について聞いたアンケートでは「スカート」が多いものの、「スラックス」も高校1年生から3年生までの間で9.6~15%。そして「どちらも」という意見も多くなっています。

このアンケートに対し、堀は「逆(男子のアンケート)がないよね」と指摘し、「"男はこうあるべき”というのもジェンダーバイアス。そうしたものも取っ払いたい」と"らしさ”からの解放を望みます。

能條さんは、「近年、女性が男性の服装の選択肢を持てるようになってきた」、「そもそもジェンダーは女性が縛られてきた部分が大きいが、反対に男性にもあり、見えなくなっている部分が大きいと思う。その議論も今後深めていくことが大事」と男性のジェンダー問題に言及しました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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