“ダービーチャンピオンシップ”は「20世紀の昔話」か?実況席から考える“静岡三国決戦”論

30周年を迎えたJリーグ。J2には清水エスパルス、藤枝MYFC、ジュビロ磐田と史上初めて3つのクラブが顔をそろえました。この“戦国J2”を静岡から盛り上げようと3つのクラブが今季、共同で新たに企画を打ち出しました。3クラブが対戦する計6試合を「静岡三国決戦」と名付けました。

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これまで、数多くの静岡ダービーをテレビ、ラジオで伝えてきたSBSアナウンサーが3人が転換期を迎えた“ダービー”について持論を展開します。第2弾は、野路毅彦アナウンサー。三国決戦の“開幕戦”となる3月18日の磐田対清水を前に、過去の直接対決を考えました。

野路毅彦アナウンサー(写真右は斉藤俊秀日本代表コーチ)

崖っぷちのダービーなんて、もう勘弁してもらいたい。

2022年10月22日の清水対磐田。清水が勝てば、最下位磐田はJ1参入プレーオフの16位までの勝ち点差が、残り2試合で6となる。得失点差では大きく離されているから、事実上、宿敵にJ2降格の引導を渡される。逆に、磐田が勝てば、17位清水、18位磐田となり、静岡県勢がともに自動降格圏に沈んでしまう。

この日、自身が出演する夕方のテレビニュースで、ダービーの結果を伝えるべく、私は、映像を編集するディレクターの横で原稿を書いていた。最終スコアは、1-1。互いに死力を尽くしたが、両チームの選手が、スタッフが、そして、サポーターまでもが1人残らず落胆した。あまりにも「痛み分け」という言葉が、ふさわし過ぎて、ニュース本番を前にした下読みでは大きなため息をついた。

どちらが勝とうが引き分けようが、さわやかに伝えられる決着など、初めからなかったダービーだった。こんな戦いは、これきりにしてほしい。

ダービーは、いつも以上に選手たちを高揚させてきた。それがスーパープレーを生んだし、時に、沸騰した湯が吹きこぼれるごとく、熱くなりすぎることもあった。

「チャンピオンシップの第2戦で、三浦文丈のファウルを受けたアレックスが蹴り返して、一発退場になったんだ。それでも、沢登の伝説のフリーキックで追いついて、ファビーニョのVゴールで、その試合は10人の清水が勝ったんだよ」

新入社員に説明していたら、彼女は静岡県出身だが、どうやら1999年は磐田と清水が最終的にJリーグ年間王者を争ったこと自体を知らないのが、わかってきた。

「私が生まれた年ですから」

と返された。どちらのファンかという次元を超えた、あの名勝負が、感動が、もはや20世紀の昔話になりつつある。

ゆくゆくは、静岡県内のチーム同士がJ1で優勝を争う試合をもう一度見たい。その予行演習として、シーズン終盤の藤枝対清水、そして、清水対磐田は、静岡県内3チームがいずれもJ1昇格やプレーオフ進出をかけて戦う「静岡三国決戦」にしよう。勝手ながら、秋までの目標をそう決めた。

(SBSアナウンサー 野路毅彦)

【静岡三国決戦】

3月18日(土)ジュビロ磐田×清水エスパルス(14:00 エコパスタジアム)

5月13日(土)清水エスパルス×藤枝MYFC(14:00 IAIスタジアム日本平)

5月17日(水)藤枝MYFC×ジュビロ磐田(19:00 藤枝総合運動公園サッカー場)

7月16日(日)ジュビロ磐田×藤枝MYFC(19:00 ヤマハスタジアム)

9月30日(土)藤枝MYFC×清水エスパルス(時間未定 藤枝総合運動公園サッカー場)

10月7日(土)清水エスパルス×ジュビロ磐田(時間未定 IAIスタジアム日本平)

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