危険が指摘されていたピット入口が従来のレイアウトへ戻される/WECセブリング

 開幕前週の公式テスト『プロローグ』で試行された新たなレイアウトについてシリーズオーガナイザーが「チームやドライバーと協議」した結果、WEC世界耐久選手権第1戦セブリング大会におけるピットロード入口レイアウトは、昨年までの形へと戻されることとなった。

 3月11〜12日に行われたプロローグでのピットレーン入口はターン15の手前に設けられていたが、15日に始まる第1戦のフリープラクティスに向けては、従来のターン15と16の間の位置へと戻されている。

 プロローグにおけるレイアウトでは、ピットエントリーラインがターン14の左キンクから始まり、最終ターン17へと向かうウルマンストレート沿いに設けられたWECの仮設ピットレーンへと導かれるコンクリートバリアのあるシケインへと誘導されるようになっていたが、複数のドライバーから危険を指摘する声が上がっていた。

 この新レイアウトでは、ピットエントリーラインに差し掛かった車両がターン14の途中で急減速してインシデントを引き起こす可能性が懸念されていた。実際、プロローグ最終セッションの終盤、JOTAのLMP2ドライバー、デビッド・ハイネマイヤー・ハンソンが、その場所で54号車フェラーリ488GTEエボと接触し、右側のバリアにクラッシュしていた。

左が2022年、右が2023年プロローグでのレイアウト。第1戦では、左の2022年レイアウトへと戻されることとなった。

 この件に関するFIAの声明には、次のように記されている。

「2日間のテストで綿密な評価を行い、全クラスのチームとドライバー、そしてFIAの安全部門と協議した結果、2022年版のレースと同様のレイアウトに戻すことが決定された」

「セブリング・インターナショナル・レースウェイのスタッフは、時期や作業量にかかわらず、FIAから要求されたすべての変更を実施することに常に前向きであり、その努力は称賛されるべきものである」

 声明ではさらに、WECに参戦する競技者たちとの議論を受け、プロローグで新たなピットエントリーレイアウトが「試行」されていたことが明らかとなった。

「IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権と同時開催される世界耐久選手権は、セブリング・インターナショナル・レースウェイのウルマンストレートに隣接する第2のピットレーンを使用している」

「長年にわたり、ドライバーからターン15のエイペックス以降ではなく、ターン14とターン15の間にピットインできるように変更してほしいという、いくつかのリクエストがあった」

「これらの意見を考慮し、2日間のシーズン前テストでピットレーン入口の代替案を評価することになった」

「新しいピットエントリーは、コンクリートウォール、タイヤバリア、ピットレーンに入る車両とコース上に残る車両を明確に分けるラインの設置を含むものであった」

 プロローグ後の再変更に対するドライバーの第一印象はポジティブで、LMGTEアマに参戦するデンプシー・プロトン・レーシングのドライバー、ジュリアン・アンドラウアーは、戻ってきた2022年のレイアウトは、先週末のものよりも安全であると指摘している。

「(ターン14の)アウト側にクルマがいると、ピットに入れないという妥協点があったんだ。それがちょっと厄介だった」とアンドラウアー。

「(再変更された2022年までのレイアウトなら)ターン15のエイペックスでイン側にいれば、イン側のラインをキープしてピットインすることができる」

「明日(走行初日)はどうなるか分からないが、より良いアイデアになると思う。危険は少ない。もし何かあったとしても、コーナー(ターン15)ですでに車速は落ちている」

 ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツのミカエル・クリステンセンは、ピットエントリーラインがキンクから始まるプロローグでのレイアウトの難しさを強調した。プロローグ初日の走行後、ターン14にピットエントリーラインが追加されたことが判明している。

「プロローグでのレイアウトは、常に悪いものだった。なぜなら、右側のレーシングラインを走っていて、左にターンするときに、目の前で誰かがブレーキを踏むからだ」

「それが問題(JOTAのクラッシュ)を生んだんだ。それは明らかだと思う。元のレイアウトに戻るのが、おそらく最良の解決策だろう。以前は何の問題もなかったからね」

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