「実は…緊張してます」実況席から考える“静岡三国決戦”勝負を分けるものとは?

30周年を迎えたJリーグ。J2には清水エスパルス、藤枝MYFC、ジュビロ磐田と史上初めて3つのクラブが顔をそろえました。この“戦国J2”を静岡から盛り上げようと3つのクラブが今季、共同で新たに企画を打ち出しました。3クラブが対戦する計6試合を「静岡三国決戦」と名付けました。

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これまで、数多くの静岡ダービーをテレビ、ラジオで伝えてきたSBSアナウンサー3人が転換期を迎えた“ダービー”について持論を展開します。第3弾は、牧野克彦アナウンサー。決戦に挑む選手の深層心理に迫りました。

清水時代の岡崎慎司選手にインタビューする筆者(写真右)

「エコパで行われた静岡ダービーをひも解きますと、2001年5月12日が始まり。エコパスタジアムのこけら落としで観客は5万2,959人も入り、大いに盛り上がりました。この試合、エスパルスの平松康平が決めた1点が決勝点となり、1対0でエスパルスが勝利という試合でした」

緊張に満ちた声で、私がいつかのダービー冒頭で語ったコメントです。県勢対決は、普段サッカーの仕事に関わっている者にとっても特別なもの。試合に向けて歴史を調べ、選手ひとりひとりのダービーとの関わりをノートに書き込みます。

1か月前から同僚たちにはハッパをかけられ、放送席に座った瞬間には電流が走り、スタジアム全体にサポーターの皆さんの気のようなものが充満しているのを感じます。ダービーでは、どうしても気負いすぎたカタい実況になりがちなため、放送直前には、無駄な力を逃そうとスタジアム内を歩いてリラックスに努めたものです。

気負いがちなのは、選手ももちろん一緒で、ダービー前に選手にインタビューした際のメモを見返すと、「緊張」という言葉がいくつも出てきました。多くの記者に囲まれている時や記者会見では、

「絶対に勝つ」

「意地でも負けられない」

と強気発言を繰り返す選手からも1対1でふと気を許した瞬間には、「実は…ものすごく緊張します」という言葉が出てきます。試合前、ピッチサイドに立った瞬間には足がガクガクする選手も少なくないようです。

特に熱狂するダービーでは、「途中出場でのプレーが難しい」と、ある選手から聞きました。後半途中から出てきた選手に対して「出場時間が短いんだからもっと走って!」と思うこともありますが、独特の緊張感で呼吸が上がりやすい上、急激に心拍数を上げて周りと温度感を合わせてプレーするのは至難の技なのだそうです。

普段の試合と違う状況下、私は、ダービーの勝敗を分けるのは、メンタルコントロールの要素がいつも以上に大きいという結論に行き着きました。

そこで興味深いのが監督からの声かけ。

「ジャンケンでさえも絶対に負けるな」と強い口調でいう監督もいれば、外国人監督は「いつもと同じ1試合だ。勝ち点3は変わらない」とあえて冷静さを求める人が多かった印象です。

さて、「静岡三国決戦」の名前では初めてとなる土曜日のジュビロ磐田対清水エスパルス。試合後のインタビューで、「監督からどんな声掛けをされてピッチに立ったのでしょうか?」という質問に対して、選手達はなんと答えるでしょうか。

正解はありませんが、どんなワードを選んで選手を最善の状態にしようと監督が試みたのか。そんな視点で、永遠のライバル対決を楽しむのも、一興かと思います。新たな時代の到来、三国決戦。他とはひと味違う雰囲気をもたらしてくれるでしょう。

(SBSアナウンサー 牧野克彦)

【静岡三国決戦】

3月18日(土)ジュビロ磐田×清水エスパルス(14:00 エコパスタジアム)

5月13日(土)清水エスパルス×藤枝MYFC(14:00 IAIスタジアム日本平)

5月17日(水)藤枝MYFC×ジュビロ磐田(19:00 藤枝総合運動公園サッカー場)

7月16日(日)ジュビロ磐田×藤枝MYFC(19:00 ヤマハスタジアム)

9月30日(土)藤枝MYFC×清水エスパルス(時間未定 藤枝総合運動公園サッカー場)

10月7日(土)清水エスパルス×ジュビロ磐田(時間未定 IAIスタジアム日本平)

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