ACSL、低騒音プロペラ「Looprop for SOTEN」の静音効果を確認。JAXAと共同で設計手法の高度化を研究

昨今、ドローンの利用は、物流や警備など社会の基幹インフラへの導入が現実的になっており、従来では飛行禁止となっていた市街地や住宅の上空も飛行できる制度(以下:レベル4)の整備が進められている。ますますドローンが、日常の生活に密着してくることが予測される。

MITリンカーン研究所、市販のドローンにトロイダルプロペラを搭載しテストを実施。プロペラによる風切り音を低減

レベル4の社会においては市街地など人間の生活圏をドローンが頻繁に飛行することから、ドローンから発生する「音」を静かにしていくことが重要な課題の一つとなっている。

新規開発プロペラ「Looprop for SOTEN」試作品

JAXAとACSLはレベル4社会の「音」の課題を解決するべく、LoopropをACSLの国産ドローン「SOTEN(蒼天)」向けに最適化設計した「Looprop for SOTEN」の試作品を共同開発した。最適化設計により、従来型プロペラ(現在のSOTENのプロペラと同形状)との比較において、同等の推力を維持したまま静音性能を達成し、人の不快感が軽減されたことを確認した(図3)。

図3 PA指標(Phyco-A)による標準プロペラと新開発プロペラの比較新開発プロペラの人間の感覚的な静音性が数値データで明確に示された(千葉大学工学部 劉浩研究室 Jianwei Sun氏による、千葉大学とJAXAの共同研究成果)

屋外での効果検証飛行試験の結果は、通常の2枚羽プロペラとの音圧レベルの比較で、最大で2.3 dBA音圧が低下(音圧エネルギー換算で41%減少)したことが確認された(図4)。また、音質も耳障りさの主因である倍音成分によるプロペラの特徴的な音が減少し、より自然界の騒音の音質に近くなる性質(図5)と相まって全体の静音性が向上していることを確認した(図5)。

図4 計測位置ごとの音圧レベル(dBA)※効果を正しく計測するため、従来型プロペラはLoopropと同じ材料にて製造したものを使用
図5 周波数分析結果(水平距離5m高度3m位置)

JAXAとACSLは、この成果をもとに、レベル4社会に向けた研究開発を進めていくとしている。

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