シリコンバレー銀行の経営破綻はどんな影響があるのか?下落局面で考えたい投資戦略

2023年3月10日(金)にアメリカの地方銀行「シリコンバレー銀行(SVB)」が経営破綻したことを受け、この3月13日週は株安が進行しました。

株価が下落することに恐怖を覚える方も多いと思いますが、こうした下落局面ではどのような投資戦略をとるべきなのか−−SVBショックから相場の下落局面での立ち振る舞い方を考えていきたいと思います。


シリコンバレー銀行(SVB)の経営破綻はなぜ起きたのか?

米国市場ではSVBの経営破綻を受けて銀行セクターは崩れ、とりわけ地方銀行株は急落する展開に。「リーマン以来最大の銀行破綻」とニュースなどで伝えられ、2008年のリーマン・ショックを連想させるなど、投資家心理を冷え込ませました。

2008年にアメリカの投資銀行であるリーマン・ブラザーズが破綻したことからその名が付けられたリーマン・ショックは、世界的な金融危機である「サブプライム住宅ローン危機」の中心的な出来事とされています。サブプライム住宅ローン危機は、住宅価格の下落と住宅ローンのデフォルト(債務不履行)が相次いだことから始まりました。アメリカでは、住宅ローンが次々と証券化され、それらの証券が金融市場で売買されるようになっていました。

しかし、低い信用力を持つ借り手に対するリスクの高い住宅ローン(サブプライムローン)が多数含まれていたため、住宅価格の下落とともにこれらのローンのデフォルトが増加し、証券の価値が暴落しました。

リーマン・ブラザーズは、こうしたサブプライムローンを多く保有しており、それが原因で資金繰りが悪化し経営破綻に。リーマン・ショックは、信用収縮や株価の急落など金融市場に大きな不安をもたらし、企業倒産や失業率の上昇など、世界経済への深刻な影響を及ぼしました。この金融危機を受けて、各国政府や中央銀行は金融システムの安定化や景気刺激策を実施しましたが、長期にわたる世界経済の低迷が続いたことは皆様もご存知のところかと思います。

それでは、今回のSVBショックはリーマン・ショックのようにはなるのかというと、リーマンショックとは本質的に違うことを理解しましょう。

SVBはカリフォルニアに本社を置いており、IT系の顧客が多く、スタートアップ企業に投資をしています。2022年にFRBが金利を大幅に引き上げたため、債券の価格が下落。SVBが運用している、住宅ローン担保証券(MBS)などの債券の価格も下落しました。

そして金利上昇でスタートアップ企業資金調達がむずかしくなり、顧客企業がSVBから預金を引き揚げており、その預金引き出しに対応するため、SVBは価格が下がったMBSを売却せざるを得なくなりました。金利上昇のリスクを管理するためのヘッジも行っていなかったと報じられており、損失補填するための増資に失敗したことで経営破綻に至った模様です。

それに対してバイデン大統領はすぐに預金者の保護を発表しましたが、SVBの経営破綻に続き、3月12日に暗号資産業界に積極的に融資をしていたシグネチャー・バンクも経営破綻、前週3月8日(水)にシルバーゲート・キャピタルも銀行業務を縮小し清算計画を公表しており、米銀行の破綻が相次いでいることで、金融システムへの先行き懸念が相場の重しとなりました。

しかしSVBはスタートアップ、シルバーゲート・キャピタルやシグネチャー・バンクは暗号資産業界に積極的に融資をしており、顧客、預金者が特殊と言えることや、金利上昇は通常は金融機関にとって本業の収益には追い風であることなどから、リーマン・ショックと比べて本質的に異なり、金融システム全体の不安に広がる可能性は低いと考えられるのではないでしょうか。

下落局面での投資戦略

しかし金価格が上昇したり、ドル円も円高方向にうごいており、リスクオフの印象を受けている、不安を感じている投資家の方は多いのでは。この週末に、さらに悪いニュースが発表されることがあれば、ブラックマンデーのような下落となる可能性もあると思いますので、全力投資は避けていただきたいですが、大きく下げれば買いのチャンスもあるのではないでしょうか。

それでは、大きく下げたらどのような銘柄をチェックすべきか−−まずは高利回り銘柄が考えられるでしょう。高利回りの米ETFとしては、バンガード・ハイディビデンド・イールドETF【VYM】が挙げられます。

VYMは米国の大型株を中心に、予想配当利回りが市場平均を上回る銘柄で構成されるFTSEハイディビデンド・イールド指数に連動する投資成果を目的とするETFです。予想配当利回りが市場平均を上回る、つまり配当利回りの高い銘柄約400銘柄に分散投資でき、銘柄数も多いため分散投資の効果が期待出来る、年4回配当金を受け取ることができます。

また増配を続けている銘柄に分散投資できるETFもよいかもしれません。代表的なものとして、バンガード・米国増配株式ETF【VIG】が挙げられます。

VIGは1銘柄で10年以上連続増配の企業に分散投資できるETFです。米国で10年以上の増配(配当を増やし続けている)実績がある、中・大型株が組み入れられており、連続して増配できる企業ということは企業業績が良く、株主還元に積極的で、しっかり株主に還元でき、コロナ禍でも増配できるくらいの底堅い需要やブランド力といった定性面の強みがあり、高収益であろう企業に分散投資できるETFといえます。
財務面で安全性が高い銘柄が多く含まれるため、ショックの際にも下落耐性がわりと強いです。VIGの経費率は0.06%とコスト面で有利なところもポイントです。

また1990年以降の過去4回の景気後退期に、S&P 500の中で消費財セクターとヘルスケアセクターだけがプラスの利益だったといわれます。

食品・消費財は景気後退時でも、人々が生活必需品や消費財を必要とするため、食品や日用品の需要は減少しません。また、低所得者層や失業者の数が増えて低価格帯の商品が需要を集めることが多いため、消費財セクターが好調に推移する傾向があります。消費財セクターのETFとしては、バンガード・コンシューマー・ディスクレショナリーETF【VCR】などがあります。

ヘルスケアセクターは、需要が比較的安定しているとされています。景気が悪くても、医療支出は削減しにくいですよね。米国では医療支出の割合がGDPの10%超となっており、世界各国の経済に占める割合も大きい巨大な産業といえます。また世界的な高齢者の増加に伴い、医療・介護等の需要が拡大しています。その市場の需要や規模の拡大は今後も続くと考えられます。米国のヘルスケアセクターETFとしては、バンカード・米国ヘルスケア・セクターETF【VHT】などがあります。


ここまでご紹介したETFはあくまで例ですが、大きな下落やリセッションの時に、何を仕込むか、銘柄や条件などを考えておくと、下落のピンチを投資チャンスに変える一助になるのではないでしょうか。

最後に、3月13日週は日本市場も下落しましたね。個人的には3月に優待、配当の権利確定月を迎える銘柄を数銘柄仕込みました。

再度お伝えしますが、材料次第では相場はまだ下落する可能性があると思います。ですが、下げ止まったらETFや高利回りの銘柄を仕込んだり、非課税制度を使ってつみたて投資などを検討するタイミングと捉えると、もしかしたらチャンスかもしれません。

少しでも皆様の投資の参考になれば幸いです。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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