埼玉県三芳町の町議会議員として、地域のさまざまな問題や課題に取り組んできたぬくい尚男(ぬくい・ひさお)さん。埼玉県の出生率を上げるためには安心して子育てができる、誰も取り残さない社会を作るべきと訴える、ぬくいさんの思いをお聞きしました。
安心して子供を産み育てられる社会の実現のために小さな声も大切に
選挙ドットコム編集部(以下、編集部):
政治家をめざしたきっかけについて教えてください。
ぬくい尚男氏(以下、ぬくい氏):
一緒に青年会議所の活動も行っていた、いとこの町長選挙の支援がきっかけで、三芳町の町議を目指しました。
支援活動の中で、議員になってほしいとの依頼をいただいたり、選挙に触れたりした経験から、私も町のために何かできるのではないかと考え、政治の世界に足を踏み入れました。
編集部:
三芳町の町議はどれくらい務められたのですか。
ぬくい氏:
2011年の初当選から2期(8年)にわたり、三芳町の町議を務めました。
編集部:
三芳町議としてどのような政策を行ったか教えてください。
ぬくい氏:
三芳町にあるインターチェンジのハーフインターからスマートインターへの変更に貢献しました。
三芳町のインターチェンジは下りに入り口、上りに出口があるハーフインターと呼ばれる構造でした。上り下りどちらからでも乗り降りを可能にするために、スマートインターにして欲しいと一般質問を行いました。
編集部:
スマートインターの計画はそれ以前からあったのでしょうか?
ぬくい氏:
三芳町のインターができた25年ほど前は、スマートインターにしようという話はあったそうなんですが、計画が頓挫してしまっていました。そこで、一般質問で私が発言したところ、町もスマートインターへの変更を再検討するに至り、2023年度中にはスマートインターが完成予定です。
編集部:
三芳町は工場が多いので、発展が期待できますね。
ぬくい氏:
そうですね。道路が整備されれば企業の進出も望めるでしょう。都心へ近いエリアながら賃料もそこまで高くないので、企業の進出により周囲も整備されると考えています。
編集部:
町議をされていたぬくいさんが県議に挑戦しようと考えたきっかけはあったのでしょうか
ぬくい氏:
三芳町議会では、議長も任されて、地域の発展のために常々動いていました。が、そのなかで、町議としてではなく埼玉県議として三芳町を支援する方がメリットがある、町のために役立つ仕事ができるのではないかと考えて県議を目指しました。
人の命を守るために政治家がいる。安心して生活できる仕組み作りが大切
編集部:
実現したい政策について教えてください。
ぬくい氏:
東武東上線の各駅にホームドアを設置したいですね。東上線は一部の駅にしかホームドアがありません。
東上線は、人身事故がとても多く、日によっては2回も3回も電車が止まったり遅延したりすることがあります。そうすると通勤通学などで東武東上線を使う皆さんの生活に影響を及ぼしかねません。
ホームドアと併せて、高架にして地上よりも高い所に駅を作れば、人身事故は格段に減ると考えています。
政治は、人の命を守るためにするものです。費用負担の話し合いと並行して検討が必要ですが、安全のためにホームドアの設置も考えなくてはなりません。いち早くホームドアを設置して事故の発生を減らしたいですね。
子供を安心して産み育てられる社会の実現ために問題の分析・改善を行う
編集部:
子育てや教育について、実現したい政策を教えてください。
ぬくい氏:
国内出生率が、ついに80万人を切りました。出生率を上げるために、出産費用の全額負担をするべきだと考えています。子育てに関する費用の高さが出産を躊躇する原因の1つです。出産費用を心配しないで、安心して子どもが産める仕組みを整えたいですね。
子どもを増やすためには、社会生活や社会風土から考えていく必要があります。
編集部:
埼玉県の周産期医療の現状についてはどのようにお考えですか。
ぬくい氏:
周産期医療に対応している病院の数は、埼玉県に4つしかありません。高齢出産の方や早産で生まれるお子さんの数が増えているので、周産期医療ができる病院を充実させるべきですね。埼玉最北端の方が周産期医療がある病院まで行こうとすると、車で2時間はかかるんです。
医療に対して不便なところも変えていかないと、出産費用を賄うだけでは出生数を上げられないのではないかと考えています。出生数が下がっている原因を分析、改善していく必要があるでしょう。
編集部:
生まれてくる子どもの数を増やすためにはどうすべきだと考えますか?
ぬくい氏:
安心して子供を産み育てられる世界にしていかなくてはいけないでしょう。子どもの数が増えるのは、子どもを健全に育てていける社会があってこそです。安心して子育てができる社会に変えていかないと、出生率は右肩下がりになってしまいます。
保育園がすぐ近くにあれば、子育てに対する不安要因を減らすことができます。しかし、待機児童が0人となっていても、0歳児や1歳児は希望の保育園に入れず、待機児童になることも多いんです。
編集部:
0歳や1歳児の待機児童が多い原因はどこにあるとお考えですか
ぬくい氏:
保育士は、幼児の年齢によって配置数が決まっています。0歳児では3人につき保育士1人以上、1歳児では概ね6人につき保育士1人以上と定められています。0歳や1歳の子には、多くの保育士さんが必要になるのですが保育士さんの数が足りていません。
編集部:
待機児童の問題以外にも、解決すべき課題について教えてください
ぬくい氏:
0歳の子どもを預けるのに、兄弟と保育園がバラバラになってしまう問題もあります。兄弟で同じ園に通えない問題を解消しないと、仕事をしながら2人目3人目を産むのは躊躇してしまうでしょう。
すぐに2人目を作りたいと思っても、現状の保育システムでは安心して産み育てられません。待機児童を減らすには、保育園を増やすことがまずは必要です。
編集部:
保育士の確保については、どのように考えていますか
ぬくい氏:
保育士資格を持ちながらも、保育士の仕事に就いていない潜在保育士が多くいます。給与や待遇などを改善して保育の仕事に復帰しやすい環境を整えたいですね。保育士に対する支援をしっかりしてこそ、子育てしやすさにつながると考えています。
誰もが安心できる社会を目指して障がい児、ひとり親支援に目を向ける
編集部:
障がい児支援について、ぬくいさんのお考えを聞かせてください。
ぬくい氏:
障がいのあるお子さんを預けられる保育園を増やしていきたいですね。障がいを持っているだけで、預けられる保育園が限られてしまいます。三芳町も障がい児を受け入れている保育園は1園しかありません。看護師を増やして、安心して子どもを預けられる体制を整えていく必要があるでしょう。
障害のあるお子さんも預けられる保育園をしっかりと作ることで仕事を辞めなくて済む社会が実現できるはずです。
編集部:
ひとり親についてはどのような支援を考えていますか
ぬくい氏:
子どもは誰も欠けることなく、十分な教育を受けられて、十分な食事ができるように国が率先して動いていく必要があると私は考えています。
子供食堂を増やすことも大切ですが、根本として一人でご飯を食べる家庭がある理由を考えなくてはならないでしょう。
経済的に困窮していたり、子どもが1人で食事を取らざるを得ないのはひとり親の家庭が多く、働きながら、子育てや家事も担う余裕がないとの話を聞きます。
子ども食堂などに対する支援も大切ですが、保護者に余裕がなくなる根本の原因に目を向けないといけないでしょう。食事面だけでなく、教育面でも支援をする必要があります。
家族の応援、支えてくれる周りの人の声に応えたい思い
編集部:
ぬくいさんの活動をご家族も応援してくださってるそうですね。
ぬくい氏:
家族も応援してくれるので、とてもうれしく思っています。家族の応援や一生懸命支えてくれる方の声を胸に、困っている人の根本の原因を解決して、安心して子どもを産み、育てられる社会の実現に向けて尽力します。
編集部:
これからどのような社会にしていきたいですか
ぬくい氏:
子どもを産みたいという社会に変えなくては、県も国もだんだんと衰退していくでしょう。私も4人の子を育てる中で、教育費などお金がかかる場面を何度も経験してきました。
子育てをする人の負担をなるべく減らして、子育てにお金がかからないような社会にしていきたいですね。
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