“Remade in Japan” EXHIBITION(令和5年2月26日開催)〜 デニムからデニムを再生する

サーキュラーエコノミーという言葉を知っていますか?

決して流行りや一過性の言葉ではなく、既に地球規模で取り組み始めている循環型経済活動のことです。

従来からある3Rというリサイクル活動を含みつつ、資源の消費量をできる限り抑えて廃棄物の排出量を減らしながら、製品の価値を循環させ続けることを目指しています。

3R:Reduce(リデュース)・Reuse(リユース)・Recycle(リサイクル)

資源循環への意識が高まっている今、大量の廃棄物や汚染物質を発生させるファッション産業のあり方が国際的な課題にもなっています。

そんななか、岡山県倉敷市のアパレルブランド5社による、岡山県の産地連携リサイクルデニムプロジェクト『Remade in Japan(リメイド イン ジャパン)が2022年秋に開始されました。

2022年度の取り組み報告と一般のかたへの啓蒙(けいもう)を兼ねた、一日限りのエキシビションにおじゃましてきました。

『”Remade in Japan” EXHIBITION』の概要

エキシビジョンは倉敷アイビースクエア内の施設で開催されました。

新緑の季節になるとみずみずしい蔦(つた)が生い茂るアイビー学館、訪れた2月下旬には蔦の気配はいっさいありませんが、味わい深い風景です。

アイビー学館

『Remade in Japan』は、2020年に立ち上げたブランドland down under(ランド ダウン アンダー)の代表である池上慶行(いけがみ よしゆき)さんが主宰しています。

land down underは設立から服づくりのコンセプトに、サーキュラーエコノミーの考え方を取り入れ、提案しています。

倉敷発サーキュラーアパレルブランドの先駆者としてプロジェクトを牽引する池上さんから、少しお話を聞くことができました。

『Remade in Japan』で取り組む “デニムからデニム再生” とは

まず、一般のかたから回収した綿100%のデニム製品を細かく裁断します。

次に反毛(はんもう)というリサイクル技術で再生糸を紡ぎ出し、デニム生地を織り直します。

その再生されたデニム生地を使って、各社で新しいデニム製品を作り、お店を通して街や人に還して循環していく取り組みです。

(左から)裁断した生地の破片を反毛という技術で綿状にして再び糸にする

エキシビションの目的

2022年度のプロジェクトの一つの成果、報告です。

ほとんどのかたが、デニムが再生できることを知らないと思うので、まずは “デニム再生の取り組み” 自体を一般のかたに広く知ってもらうためでもあります。

次回また『Remade in Japan』のプロジェクトをやるときに、興味を持ってくれた人に参加してもらえたらいいなと思っています。

会場に設置されたリサイクルボックス

半永久的に新しい価値を再生し続ける

プロジェクトのメインは、5ブランドによるリサイクル事業ですが、そのサブ的な取り組みとして、産地の若手生産者を中心に『Sanchi meeeting』を開催しました。

メインの事業と並行して、7人のメンバーで約6か月間、勉強会などを通して循環型のものづくりを体験したそうです。

そうして作られた、2022年度のプロジェクトの成果の一つとして完成させたジャンプスーツ、いわゆる “ツナギ” がこちらです。

再生デニムで作ったジャンプスーツ

近くで生地をよ〜く見ると、超微小な濃いブルーのツブツブが模様のように入っています。

再生デニム生地

回収したデニムの色は濃紺もあれば薄い青もあってさまざまなので、微妙なニュアンスの入った生地に織り上がるのです。

印象として再生デニムたるゆえんは、とくに感じずまったく新しく開発された素材のように感じました。

ネップ糸のように入っていてかわいいし、むしろおしゃれなんじゃ……。

ネップ糸とは繊維が絡み合ってできた節のことで、この糸を使って織られた生地の製品が一般的にあります。

これまで再生◯◯◯というと、言葉の響き自体に若干劣るもの(実際にはそんなことはなくても)という印象を持っていたのですが、そのイメージはありませんでした。

形や生地ばかりを鑑賞していたところ、さらなるポイントがあることを教えてくれました。

資源循環を見据えた服作り

再生デニムで作ったジャンプスーツのこだわりは、綿100%のリサイクル生地だけではないんです。

縫い糸も綿素材ですし、小さなタグに関しても既存のものはほとんどポリエステルですが、刺繍も含めて綿素材で作っています。

ボタンはプラスチック素材ではなく、ヤシの実が原料のナットボタンという植物性由来のボタンを使っています。

すべてが再生しやすい素材でできています

このツナギには、リサイクル製品のサンプルとして“こういう作り方ができます”と伝える役割もあります。

植物性原料で作られたナットボタン
綿100%素材のタグ

リサイクルやリユースで使ったから捨てる、だけではなく。

リメイクで一度作り替えて使ったから捨てる、だけでもなく。

また、再生できる

新しい価値を生み出しながら資源の無駄を最小限に抑え、半永久的に資源を循環させること。

私の頭の中で、サーキュラーエコノミーの仕組みに合点がいった瞬間です。

画像提供:land down under

共同開催の5つのブランドを巡る


サーキュラーエコノミーについて少し理解が進んだところで、共同開催する5つのブランドのブースを順に巡りました。

▼5つのブランドは、以下のとおりです。

  • THE EASY SHOP
  • ダンジョデニム
  • WHOVAL
  • Ura studio
  • land down under

左側の白いラックは自社製品、右側の赤いラックに再生デニム生地で作った製品がかかっています。

▼THE EASY SHOP(ザ イージー ショップ)

THE EASY SHOP 再生デニム製品

ダンジョデニム

ダンジョデニム 再生デニム製品
ダンジョデニム 再生デニム製品

WHOVAL(フーヴァル)

WHOVAL 再生デニム製品

いくら再生デニムが地球に優しいと言っても、とくに靴などアイテムによって強度が必要なものは、化学繊維も使っているそうです。

Ura studio(ウラ スタジオ)

Ura studio 再生デニム製品

Ura studioでは、タフティングという手作業で糸を打ち込みラグを作るワークショップも開催していました。

倉敷帆布の残り糸から再生した糸を使っています。

タフティング

land down under

前出のUra studioで紹介したタフティングで作ったラグ

今回のプロジェクトが5つのブランドで共同開催された、二つの理由を池上さんが教えてくれました。

街や地域全体で取り組んでいくために


一つ目の理由は、共同開催することでスケールメリット的なところで、リサイクルの生地を作りやすくするということがあります。

一社だけでやっていたら費用の面で負担が大きくなりますが、共同ならコストが下がり、発注量も増やせます。

また、永続的な資源循環を実現させるには、産地を中心に街や地域全体で取り組んでいく必要性も出てきます。

服作りのあり方を考え直すきっかけとして

二つ目の理由は、服を作る企業側が、服作りのあり方を改めて考え直すきっかけにもなると思っています。

リサイクルしようと思ったときに、今の服は異素材の組み合わせも多くリサイクルしにくい作りなんです

もちろん、急にすべて綿100%にすることが難しいのは理解しています。

取り組みに参加することによって、一部製品は綿の糸で縫ってみようとか、異素材を使わない製品開発をやってみようとか、ものづくりの部分で新たな気づきにつながる可能性があると考えています。

おわりに


サーキュラーエコノミーでは、ものづくりの段階から、再利用できることを視野に入れて設計することを求められています。

限りある資源を循環させ続ける

『Remade in Japan』を通して、ここ岡山から、ジーンズの産地から再生デニムによる資源循環の方法が広まっていく未来にとてもワクワクします。

エキシビジョンに訪れてみて、作る側だけの話ではなく、私たち使う側にも意識が必要だということが実感としてわきました。

そしていつかは作る側が「再生デニムです」「リサイクル品です」と、わざわざ言わなくてもよくなること。

買う側にとっては、製品が良いから買うのであって、たまたまそれが再生デニムだったに過ぎないこと。

大切に使い終わったら、再生資源として循環できることを当たり前のように知っていること。

そうなったときこそ、本当に自然な循環の一部になるのではないかと思いました。

今回のイベントレポートでは、プロジェクトに込めた想いやその構想は断片的な紹介にとどまり、伝え切れていません。

もっと深く知りたいと思ったかたは、ぜひland down underのサイト内にあるRemade in japanページ下部のメディアインフォメーションから記事を辿ってみてください。

ファッションの環境問題について学べるこちらのサイトも参考になるので、ぜひチェックしてみてください。

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