恐竜の化石をCTスキャンしてみたら…嗅覚や視覚など生態解明へ、福井県立大学恐竜学研究所と福井大学医学部が共同研究

医療用CTスキャナーにのせられたアロサウルスの頭部の化石。長さ約85センチ、高さ35センチある=2023年3月、福井県永平寺町の福井大医学部Aiセンター

 福井県立大学恐竜学研究所と福井大学医学部法医学教室は、医療用CTスキャナーを用いて恐竜の骨の化石を分析する共同研究を始めた。化石内部の脳や血管、神経などが収まっていた痕跡を可視化することで、大型恐竜の嗅覚や視力、バランス感覚、聞いていた音域など生態の解明に役立つとしている。

 恐竜学研究所の河部壮一郎准教授によると、頭骨の標本が全て実物でできていることはまれで、一部は人の手で復元されていることが多い。CTスキャンで実物部と復元部をはっきり見分けられ、実物部に基づく分析で、詳細な生態により迫ることができる。化石は硬いため高出力の工業用エックス線CTスキャナーを用いる場合もあるが、大きな化石は分析しづらいのが現状。同センターの医療用スキャナーは開口部が直径78センチあり、時間をかけて複数回撮影することで構造を観察できるという。

 分析する化石は、県立恐竜博物館所蔵の大型草食恐竜ヒパクロサウルスやプロサウロロフス、肉食恐竜アロサウルスの頭骨など。いずれも常設展示されているが、現在はリニューアルのため夏まで休館中で、取り外し可能。その間、10種類近くの恐竜化石を調べる。聴覚感覚器「内耳」の構造を解析して恐竜の声に関する情報を得たり、あご周りの神経の発達具合を解明できたりする可能性があるという。

⇒【写真】恐竜博物館の森、空から見ると…偶然の形がツイッターで話題

 研究は県立大の恐竜分野と、福井大の法医学、放射線医学分野などが連携。大学の垣根を超えた異分野連携で化石のCTスキャンを行うのは国内初としている。

© 株式会社福井新聞社