第95回選抜高校野球で3月18日の大会初日に高知と対戦することが決まった福井県の北陸の1番打者、水野伸星(しんせい)選手(1年)は紫外線のアレルギーを抱えながら野球人生を歩んできた。医師から競技転向を勧められても「野球を辞めようと思うことはなかった」。これまで支えてくれた周囲への感謝を胸に甲子園に挑む。
水野選手が野球を始めたのは小学4年のとき。1年近くたったころ、熱中症のような症状に襲われた。「耳が痛くなり、黒く変色した」という。病院に行くと紫外線のアレルギーだと診断された。その後も夏場になると度々、高熱を出すことがあった。医師からは室内競技はどうかと勧められたが、「プロになりたいからどうしても野球をやりたい」と一蹴した。
現在も紫外線から身を守るため、夏場でも長袖のハイネックシャツは欠かせない。日焼け止めクリームも顔が白くなるまで塗る。丸刈りにすると皮膚がただれるため、チームで唯一、髪の毛を伸ばしている。「自分だけ長いのは嫌だった」。水野選手は北陸に入学した当時のことを思い返す。「髪は長いですが許してください。よろしくお願いします」。意を決してあいさつした。もちろん先輩は温かく迎え入れた。「大変やな」「頑張れよ」。その一つ一つの言葉が水野選手の緊張をほどいた。
先輩の理解に加え、ここまで活躍できたのは家族らのおかげだと水野選手は言う。中でも、野球を続けると決めたときに「やるからには誰にも負けるな」と背中を押してくれた祖父の言葉は今も胸に響いている。その祖父は昨秋の北信越大会前に亡くなった。当時控え選手だった水野選手は祖父の言葉を原動力に帰宅後、これまでの倍近い500スイングを自宅でも行うようになり、レギュラーの座を射止めた。北信越大会では1番に座り、全4試合で安打を放つ活躍。優勝の原動力ともなった。
選抜大会では好投手との対戦を熱望している。「おじいちゃんに活躍する姿を見てほしい」。柔らかな笑みを浮かべた。