今年の春闘、大手で満額回答相次ぐ…“賃上げ”傾向にある一方で懸念すべき点は?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。3月20日(月)放送の「GENERATION」のコーナーでは、“賃上げ”について議論しました。

◆2023年の春闘…大手企業は軒並み賃上げ

Twitterのスペース機能を活用して幅広い世代の視聴者に参加してもらい、Z世代・XY世代のコメンテーターと議論する「GENERATION」。この日のテーマは、"賃上げ”です。

記録的な物価の上昇が続くなか、実質賃金も今年1月は−4.1%と10ヵ月連続で減少。加藤厚労大臣は物価上昇を超える賃上げに取り組むとしていましたが、3月15日に迎えた2023年春闘の大手企業の集中回答日には、基本給を底上げするベースアップなどの労働組合の要求に対し、製造業の電機7社と自動車8社の全てが満額回答となりました。

そんななか、政府は経済界・労働界の代表らと賃上げについて協議する「政労使会議」を8年ぶりに開催。岸田首相は「賃上げは新しい資本主義の最重要課題」とし、中小企業などの賃上げ波及に向けて環境整備に取り組む意向を示しました。

大手企業の主な賃上げ状況を見てみると、ファーストリテイリングは国内のグループ従業員の年収を最大約40%アップ。トヨタ自動車グループでは、定期昇給や手当など(月額)、デンソーでは1万4,600円アップ、豊田自動織機では1万4,000円アップとなりました。

なお、労働組合の中央組織「連合」は、傘下の805組合の春闘の賃上げ状況を集計した結果を発表。正社員で平均3.80%になったということです。

こうした状況に対し、番組Twitterにはさまざまな意見が。「IT下流の弊社は賃下げムード」、「1部の企業だけ上がってそれでOKだったら全く意味ないですよね」、「賃金が低い中小企業や非正規ほど賃上げされないんだからつらい」と嘆く声などがありました。

◆賃上げの負のデメリットを負うのは若者!?

NPO法人「あなたのいばしょ」理事長の大空幸星さんは、賃上げの背景について言及。「物価も高騰し、企業側は上げないといけないムードが高まり、このような決断になったところはあるが、これは全く持続的ではないと思う」と案じます。その上で「賃金を上げることで消費が増え、還元されるということを企業側がわかって、契機になればいいが、単純にムードによって上げていくには限界があることも知っておかないといけない」と話します。

獨協大学特任教授の深澤真紀さんは、昨今、学生たちと話をすると「老後のために貯金をする」といった声が聞かれるといい、「そんな社会を作ってしまって申し訳ない」、「私たちが20代、30代の頃は老後のことも考えなければ、貯金もしなかった」と陳謝。

また、今は高校で金融教育が始まり、大学生の間でも年金のことや経済、そして賃上げなどへの関心が高まり、そうしたことを普段から話す機会が増えているものの、プラスもマイナスも含めた労働者の権利などについてしっかりと教えていないと現状を語ります。

深澤さんの意見に、大空さんは「基本的には賛成」としつつも、「賃上げによって一時的に起こるデメリットで失業率が一度上がるということがある」と意見します。「例えば、韓国は最低賃金を一斉に引き上げた後、一時的に若者の失業率がものすごく上がった」と事例を挙げ、「みなさん賃上げを良いことのように言うが、実は最も負のデメリットを受けるのは若者。この仕組みを(若者が)詳しく知りすぎると不安が増す可能性があるので、そのバランスが難しい」と苦慮。

◆今後はより稼げる会社を増やすべき

大手企業が賃上げをする一方で、中小企業はどうなのか。今年1月に城南信用金庫と東京新聞が実施した738社へのアンケートによると、中小企業の72.8%が「賃上げしない」と回答。できない主な理由として「収益増加を見込めない限り余裕はない」、「価格転嫁ができておらず、踏み切れない」などの意見が出ています。

中小企業が賃上げできるようにするにはどうすればいいのか。キャスターの堀潤が意見を求めると、モデルでタレントの藤井サチさんは「長期的に見て、イノベーションを起こせる会社がもっと増えてほしい!」と切望します。

30年前は世界中の企業の時価総額トップ50に日本企業が32社入っていたものの、現在は1社のみという現状に触れ、「世界との差がかなり出てきてしまっている。イノベーションを起こせる会社が増えれば、昔のように経済が上向きになるのかなと思う」と期待を寄せます。

また、藤井さんの周囲で起業している人に話を聞いてみたところ、日本は世界市場のなかでも上場しやすく、そこにはさまざまなメリットがあるものの、大きな会社が育ちにくい側面があると指摘していたといい、「投資する側も起業する側も長期的に見て、もう少しスケールが大きくなってから上場しようみたいな、マインドの変革みたいなものが求められているのかなと思う」と話します。

番組のTwitterスペースに参加していた視聴者からは「賃金を上げる方向性が合っている。来年度もぜひその方向性でやっていかないと国際社会に勝てない。(賃上げのデメリットに関しては)税金の仕組みをどのように緩和していくのかも重要」との声が。

この意見に大空さんは税制の見直しも必要としつつ、日本には平均社員数3人の小規模事業所が300万社以上あるなか「僕は最低賃金を全国一律で引き上げることが一番良いと思うが、体力的についてこれない会社もある。果たしてそこをどれくらいのコストをかけ救済していかないといけないのか考えないといけない」と危惧。

そして、今後については「稼げる企業、賃上げが反映できる企業が増えることで当然税収が増える。そうした考え方があってもいいんじゃないか」と持論を述べます。

深澤さんは「会社を救うよりは人を救うこと。小さい会社がなくなったとしても、(そこで働いていた人たちが)次の会社で働けること。人が重要で、やはり全ては人権の問題。労働者がどうやって尊重されるかを考えるべき。小さい自営がもっと増えれば良い、もともと日本はそういう社会だった」と訴えていました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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