下町ロケットのガウディ計画モデル…心臓修復パッチを国に承認申請 福井経編興業と帝人、大阪医科薬科大学

福井経編興業などが開発し、国に製造販売承認を申請した「心・血管修復パッチ」のイメージ図(同社提供)

 ニット生地製造の福井経編興業(本社福井県福井市、高木義秀社長)と帝人(大阪市)、大阪医科薬科大学は3月27日、約10年かけて開発を進めてきた心臓組織手術用の「心・血管修復パッチ」の製造販売承認を厚生労働省に申請したと発表した。早ければ年内にも承認される可能性があり、2023年度内の市販化を目指す。

 高木社長は取材に「心疾患の子どもたちを救いたい一心でワンチームで頑張ってきた。承認を受けて一日でも早く全国に届けたい」と、実用化に向けた最終段階への到達を喜んだ。

 福井経編興業など3者は14年、先天的に心臓組織に穴などがある疾患の治療を想定し、心臓組織を修復・補強するための新しいタイプの修復パッチ開発に着手したと発表。高度な経編技術を生かし、体の組織に吸収される糸と非吸収性の糸を組み合わせた特殊な生地を開発した。

 修復パッチは高い強度と伸長性を兼ね備え、体内に吸収される糸が分解されると伸長する仕組み。特に成長に伴って心臓が大きくなる子どもに適しており、再手術のリスクを低減できるという。直木賞作家池井戸潤さんの小説「下町ロケット2 ガウディ計画」のモデルにもなった。

 19年5月から臨床試験を開始し、さまざまな先天性心疾患のある0歳から成人までの患者を対象に30症例以上で実施。術後1年間、全症例で問題になるような事象はなく、再手術や再治療の必要がないなど、国の製造販売承認申請に必要な主要評価項目を22年5月までに達成していた。

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 修復パッチの開発事業は厚労省の「先駆け審査指定制度」の対象となっているため今後、優先的に審査される。福井経編興業によると、近年の国内での心臓大血管手術数は年間約6万件あり、修復パッチはこれらの患者に対応可能という。同社はクリーンルームでの製造設備を既に整えており、国の承認後すぐに量産化できるとしている。

 3者は海外展開や要素技術を応用した新製品ラインアップの拡大に取り組むとしており、高木社長は「メディカル分野での開発を続けて付加価値を上げていき、福井から世界に通じる製品をつくっていきたい」と意気込んでいる。

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