諫干開門、再び認めず 福岡高裁 漁業者の控訴棄却

控訴棄却を受け「有明海が再生するまで闘い続ける」と話す馬奈木弁護団長(中央)=28日午後2時41分、福岡高裁前

 国営諫早湾干拓事業を巡り、潮受け堤防の閉め切りで漁業被害が起きたとして湾内の漁業者26人が国に即時開門を求めた第2、3陣訴訟の控訴審で、福岡高裁(森冨義明裁判長)は28日、訴えを退けた一審長崎地裁の判断を支持し、控訴を棄却した。漁業者側は上告する方針。
 争点だった閉め切りと湾内の漁獲低迷との因果関係について、判決は「漁場環境の悪化を招いた高度の蓋然(がいぜん)性がある」と認定。ただ、事業には高い公共性、公益性があるとし、開門で防災機能が損なわれることなどを総合的に考えると請求は認められないとした。
 開門派弁護団によると、因果関係を明確に認めたのは関連訴訟で3件目。タイラギ被害まで含めたのは初めて。馬奈木昭雄弁護団長は認定を一定評価しながらも、事業がもたらした効果の方が大きいと判断した点について「今季の有明海のノリ被害だけでもどれぐらいになるか。現実を真正面から捉えていない誤った判決」と批判。「話し合いによる解決しかありえない」とし、有明海再生に向けた前提条件なしでの協議をあらためて国に求めた。
 一審長崎地裁は、閉め切りが潮流速の低下、成層化の進行など湾内の環境変化の一因とする一方、寄与の程度は大きくないなどとして漁場環境の悪化までは否定していた。控訴審判決は「干潟の水質浄化の機能喪失や閉め切りに伴う潮流速低下、赤潮の増加などの要因が複合して漁場環境悪化を招いた」とし、「諫早湾のタイラギや漁船漁業の漁獲量減少が将来にわたって継続することが予想される」と指摘。原告らの漁業行使権の一部侵害を認めた。
 その上で、漁業補償契約締結で一定の損失補塡(ほてん)が図られ、開門による干潟再生効果は限定的などとして、「請求を棄却した原判決(一審判決)は相当」と結論付けた。
 第1陣訴訟では最高裁が2019年、漁業者の上告を棄却。開門を命じた10年の確定判決の執行力排除を国が求めた請求異議訴訟でも最高裁は今月、漁業者の上告を退け、ねじれていた司法判断は「非開門」で統一されている。第4陣訴訟は長崎地裁で係争中。


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