暖かい色に包まれ… 病院の霊安室を一新 高齢化で迎える「多死社会」

病院の霊安室といえば、薄暗いイメージですが、去年、移転・開院した広島市の市立病院では従来のイメージを一新しようと改装しました。高齢化の果てに死者が急増する「多死社会」を迎える中、そのワケは…

去年5月、移転・開院した広島市立北部医療センター安佐市民病院です。年間1万4000人の患者が入院するこの病院が、2つの霊安室を改装しました。

安佐市民病院 土手慶五 病院長
「患者さんがお亡くなりになって、寒々とした部屋で裏口から出ていく。人生の敗北そのもので、何かこう嫌だなあと」

改装前の霊安室です。およそ12平方メートルの部屋は壁紙クロスを張っただけでした。

改装後の部屋です。部屋全体が暖かい色に包まれ、中央には地元の画家・故 武永槇雄さんの仏画が掛けてあります。設計は、広島の1級建築士・栄花彰子 さん…。施工も地元業者が担当しました。

1級建築士 栄花彰子 さん
「特にこだわりましたのは素材でして…」

しっくいの壁にも工夫がありました。

栄花彰子 さん
「全体を包み込むような素材ということで、これは広島のカキ殻で作ってあるしっくいを塗っていまして」

仏画の周りの紙で作った布地「紙布」は、江田島のものです。

栄花彰子 さん
「紙の糸を織り合わせて作っているもので、柄や色が不均一なところがすごく奥行きを感じさせる素材になっています」

仏画は、北広島町が保管していたものを借り受けました。

北広島町 箕野博司 町長
「霊安室という人と人との別れのところでこういう絵を飾っていただくというのは、非常に武永先生も非常に喜んでおられると思います」

県内の病院では、ほかに例がないという霊安室…。高齢化の果てに死者が急増する「多死社会」を迎え、死のとらえ方を考え直そうという思惑もあります。

安佐市民病院 土手慶五 病院長
「日本人の死因で一番増えているのは老衰です。がんでもないですし、心不全でもないですし、脳卒中でもないです。老衰で亡くなったったときに、じゃあ、それは敗北かどうかと。この多死社会における人の死を考え直す機会になっていただければと思います」

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