【社説】宮日SDGs賞◆具体的行動の広がりを期待◆

 国連が定める持続可能な開発目標(SDGs)の理念がようやく浸透し、本県でもSDGsを意識した活動が幅広く見られるようになった。本紙記事で紹介した取り組みのうち、模範的活動として「宮崎日日新聞SDGs賞」を選び、表彰式がきょう、宮崎市で行われる。記念すべき第1回は日向市の旭建設(黒木繁人社長)が受賞する。
 同社は、使命である「土木の道」の趣旨に共通するとして、2020年7月に県内土木・建設業で初めて「SDGs宣言」を行った。SDGsの国際的な17の開発目標のうち7項目を自社目標に掲げ、女性やシニア世代、外国人ら多様な人材を積極的に採用しているほか、社員の健康推進や教育機会の確保、環境美化活動など重層的な取り組みを進めてきた。
 さらに人口減少や高齢化といった地域の課題を意識した社業を展開、社会貢献の姿勢を前面に打ち出す。一例を挙げると、ICT(情報通信技術)を活用し、離れた場所から工事現場をコントロールする遠隔臨場や無人化施工を積極的に推進。リモート作業が可能になり、働き方改革などに成果を得た。
 また県内業界で唯一、経済産業省の「新・ダイバーシティ経営企業100選」に選定され、全国レベルでの評価の高さを裏付ける。地域社会と共存する企業であるという認識を社員に持ってもらい、自身の企業が果たす役割を自覚して技術力や組織力を磨いてきた同社の姿勢は、今回の受賞をきっかけにさらに注目を集めるに違いない。
 地元企業は地域課題と無縁ではいられない。環境問題や社員の労働環境を度外視した利益優先はもはや時代遅れだろう。地域課題の解消に向けてどう貢献できるか、そのサイクルの中に利益を生み出す仕組みをどう位置付けるのか。開発目標を、職場や業務に落とし込むにはどんな手続きが必要なのか。中にはこうしたハードルを感じる企業もあるかもしれない。
 留意したい点もある。企業のアピールになるからとSDGsを導入し社員が胸元にバッジを付けるだけでは不十分だ。企業やそこで働く社員一人一人の価値観が変わり、地球環境や地域のための具体的行動を持続させることが求められる。言葉を唱えるだけではない、本気度が問われているといえよう。
 企業の社会貢献活動が意識化されれば社員のモチベーションは確実に上がる。「今やSDGsに取り組む企業でなければ若者は見向きもしない」と話す教育機関の就活担当者もいる。それだけSDGsは企業価値を高めてくれるということだ。そうしたメリットを糧に、ムーブメントの広がりを期待したい。

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