成田空港騒音で住民提訴 茨城・稲敷や千葉 深夜飛行中止、賠償求め

千葉地裁前で横断幕を掲げる原告団の住民たち=千葉市

千葉県成田市の成田空港を発着する航空機の騒音問題を巡り、稲敷市と河内町など茨城、千葉両県の5市町の住民計138人が31日、国と同空港を管理する成田国際空港会社(NAA)に、夜間早朝の飛行差し止めや健康被害の損害賠償など計約2億9300万円を求め、千葉地裁に提訴した。原告の住民は「眠れる夜と静かな朝を取り戻したい」と訴えた。原告団によると、民間会社に飛行差し止めを求める訴訟は全国初という。

成田空港で離発着可能な時間帯は現在、午前6時から、最大で翌日午前0時半。滑走路新設による2029年3月の機能強化後は、午前5時から最大で翌日午前1時に拡大する予定だ。

訴えによると、住民側は離発着を午前7時から午後9時までにするよう要求する。NAAには、睡眠障害などの健康被害を理由に1人当たり158万4千円、今年4月から夜間早朝の離着陸が禁止されるまでの間は1人当たり月4万4千円の支払いを求める。

提訴後に千葉県庁(千葉市)で記者会見した原告団は、「内陸にある空港で夜間早朝の飛行が認められているのはここだけで、異常だ」と強調。加藤茂団長(72)は「睡眠障害になり、寝る時に呼吸器が必要になった」と訴えた。

住民側は、同空港の滑走路延長や年間発着回数の増加といった機能強化に伴い、空港から30~10キロ圏内に入る稲敷市と河内町を中心に、茨城県でも騒音被害が拡大すると主張する。

原告団に加わった内藤隆さん(75)=稲敷市=は「孫は航空機の騒音を怖がって泣き、長男夫婦はほとんど家に来ない」と話し、「子どもは音に敏感。自分はもう先は長くないが、子どもたちのためにも頑張りたい」と訴えた。

国とNAAの担当者は、それぞれ「訴状が届いていないのでコメントは差し控える」としている。

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