〈激戦地ルポ 2023長崎県議選・2〉西彼杵郡区 激しい“2番手争い”

3候補のポスターが並ぶ掲示板=時津町

 西彼長与、時津両町が舞台の西彼杵郡区。前回は長与を地盤とする自民、非自民の各候補が2枠を分け合う一方、自民が長年堅持してきた時津の議席を失った。今回も三つどもえによる「長与対時津」「自民対非自民」の構図は同じ。ただ実情は熾烈(しれつ)な“2番手争い”となっている。
 「1票差でも勝ちは勝ち。ぜひ勝たせてほしい」-。告示日の3月31日、長与町で出陣式に臨んだ立憲民主現職の饗庭敦子候補は、4年前の接戦を引き合いに声を振り絞った。
 前回は旧国民民主から出馬し、時津出身の自民新人をわずか59票差で退け、滑り込んだ。その後、政党再編で立民に合流した。その上、支持母体である連合長崎などの労組は弱体化が進み、陣営幹部は「(国民支持の)労組や議員の票は、前回ほど見込めない」と苦しい内情を明かす。
 2日の個人演説会で選対幹部が標的に挙げたのは、自民新人の冨岡孝介候補だった。「(冨岡候補に)時津の票がまとまるとかなり厳しい。もう一度団結を」。3候補中唯一の「女性候補」「非自民の受け皿」として浮動票の取り込みにも力を入れている。
 「思ったより集まったが地元の人が少ない」。時津町であった冨岡候補の出陣式。70人ほどの参加者の中には業界関係者が目につき、町議の一人は危機感を募らせた。
 冨岡候補が時津で過ごしたのは中高6年間。元衆院議員で父勉氏の秘書だが、自身の選挙は初めて。周囲は「まだ知名度が足りない」と焦りを隠せない。
 それでも時津の議席復活に向けた地元の元県議や町議らの鼻息は荒い。前回は自民時津支部が候補者を擁立できず、新人が他支部経由で自民公認を取り付けるなど内部分裂の様相も呈したが、今回は違う。
 陣営幹部は「現状、山口候補が頭二つ抜けている。うちと饗庭陣営との2番手争いだ」とみる。前回42.33%と県内最低だった時津町の投票率アップが勝利の鍵と狙いを定める。
 一方、3期目を目指す長与地盤の自民現職、山口経正候補は、強固な後援会組織を主体に選挙戦を展開。ただ支持者の高齢化など不安要素も見え隠れする。陣営幹部は「油断はできない。同じ自民候補の地盤とはいえ、時津からも票を奪う覚悟だ」と決意を示す。


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